イス ページ1
最初は正直、関わりたくないなって考えていた。
休み時間、クラスメイトの女子のイスになって10円をもらっているのを見たときから、彼の印象メーターはマイナスの方へ針を傾けていた。それまでなんとも思っていなかったのに、よくない印象を抱くことになったのはそれがきっかけ。
私は元々学校に馴染めていなくて、友達と呼べる人は誰もいなかった。だから授業と授業の間の休み時間や休日は勉強をするしかなくて、成績は学年でもいい方だ。
そんな私だから、クラスの目立ってる女子がオモチャみたいにして遊んでる男子との関わりなんて、もちろんなかった。
「ねぇデンジ、イスやってー」
「おー、いいぜ」
いつものお昼休み。
いつも通り、10円玉を握らされた彼は四つん這いで女子のイスになっていた。またやっているなと思いながら、焼きそばパンをかじる。美味しいけどソースが濃かったので喉が渇いて水筒に手を伸ばすと、やけに視線を感じることに気づいた。
誰に見られているんだろう。気になりはしたけど、人と目を合わせるのは苦手だ。こっちを見ている人の方を私も見たら、目が合ってしまう。
かろろん、と氷の音を立てながら冷たい水を飲んで頭をリセットさせる。……それとなく確認するくらいなら、いいかな。
パンのふた口目を頬張りつつ、ゆっくりと目線を横へ移動させていく。さっきの女子が仲良しの子達と談笑しながらお昼を食べていた。私になんて微塵も興味がないようで安心して前を向くけど、まだ視線は感じる。どうしよう……。
まさかと思って、さっきと同じようにちらりとスクールカースト上位女子グループの方を見遣る。そのまま、一番私寄りにいた子の下へ意識を向ける。
「……！」
予想が確信に変わったとき、私は食べていた焼きそばパンでむせそうになった。そのくらいびっくりしてしまった。
だって、イスにされていた彼が、丁度こちらの席の方角へ顔を向けて、私から一切視線を外さずにいたからだ。
求められたイスの位置や角度が完全にそうしている、というのはわかるけど、それにしても私のことばっかり見る必要はないはずだ。床を見てよ。体勢がキツイって言うなら、私をガン見する以外にないの？
自意識過剰だっていう自覚はある。今回ばかりは、ただの自意識過剰であってほしいと思う。
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めがね - とっても良い！！作品！！！です！！素敵な作品をありがとうございます。 (3月20日 0時) (
レス) @page18 id: a861171d21 (このIDを非表示/違反報告)
awake - 好き (2月17日 21時) (レス) @page18 id: 8771cd27cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あきいろ | 作成日時：2023年9月2日 11時
