36話 ページ36
「今のあいつは?」
「俺の保護者だよ」
「保護者?父親か?」
父親?冗談じゃない。
母さんをあんな風にした男など、もう父親でも何でもない。そんな男と今でもつるんでいるのかと思われたのか?他意はないのだと分かっていても、少し苛立った。
「違うよ」
俺は気持ちを誤魔化すように歩き出す。
「今日バイト代入ったんだ。何かご馳走するね」
ニコっと笑ってみせると、ショーターは立ち止まったまま動かない。
変な顔をしただろうか。
「早く!」
俺は彼の手を引いて歩いた。
.
.
.
何処の店にするか決めていなかったので、雰囲気の良さそうな所に適当に入った。
「いつ、出てこれたの?」
「今日だ」
「そっか、今日出所だったんだね。おめでとう、全然知らなくて」
今日だったのか…。本当に俺は何も知らなかった。
席についた時に出された水の入ったグラスを見つめる。まだ彼の顔がしっかりと見れない。盗み見ても、彼の顔は強張っていて、まだ笑顔を見ていなかった。
「今日学校じゃなかったのか?施設の人に聞いたら学校だって…」
え?
施設にまで来てくれてたのか?俺は内心驚いた。偶然店に来たわけじゃない……か。
「施設に行ったの?」
「ああ、お前に会いに」
「そっか、ごめん。マーディアには場所は伝えてたんだけど」
「ああ、姉貴から後で聞いたよ」
まさか、彼がそこまでして俺に会いに来るとは思っていなかった。その逆で、もう二度と会ってもらえないのだと思っていたから。
彼が水を飲むのをみて、俺も一口水を飲む。
ああ、そうだと、俺は思い出す。彼とは学校へは休まず行くという約束をしていたんだった。
「学校はね、今日は創立記念日でお休みだったんだよ」
その約束を覚えているかは定かではないから、少し不安になったがそう言うと、彼は押し黙った。
もう忘れちゃったよね…。
沈黙のまま時間が経って、注文した料理がテーブルに並べられた。
「食べよ?」
そう言っても彼は動かず、一点を見つめている。
しばらく待っていたが、動かない彼を見て肩を落とした。
一緒に食べたくなかったかな。
しぶしぶスプーンを手に取って、頼んだピラフをすくって口に運ぶ。
「……あのなA…」
ようやく動いたと思ったら、先程よりも頬を強張らせていて、俺はいい話では無いのではないかと思い、言葉を遮るように、食事を勧めた。
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ash - はじめまして、以前よりセキトさんの作品を楽しく見させて頂いている者何ですが、まさか作品が見られないような状態なっていたのでとても心配しております。もう、セキトさんの作品を見ることは出来ないのでしょうか?他の場所での活動をしているんですか? (2019年5月14日 7時) (レス) id: 85f7c1b244 (このIDを非表示/違反報告)
セキト(プロフ) - 紗衣さん» お久しぶりです。いつも素敵たコメントをくださって本当にありがとうございます!とても励みになっておりました。またお目にかかることができましたらまたよろしくお願いします! (2019年2月27日 17時) (レス) id: 6cf70c12a7 (このIDを非表示/違反報告)
セキト(プロフ) - みんてぃあさん» はじめまして、お返事が遅くなりすみません。突然のことで驚かせてしまって申し訳ありませんでした。またどこかでお目にかかることがありましたらまたよろしくお願いします!好きと言っていただけて、とても嬉しいです! (2019年2月27日 17時) (レス) id: 6cf70c12a7 (このIDを非表示/違反報告)
紗衣(プロフ) - セキトさんのお話が大好きでいつも読ませていただいていました!またこうしてセキトさんの話を読むことができて嬉しいです。またセキトさんの作品が読めることを楽しみにしています! (2019年2月26日 20時) (レス) id: 72ad67f590 (このIDを非表示/違反報告)
みんてぃあ - セキトさんの作品大好きです!いろいろあったみたいで、作品楽しみに読んでいたのですがあまりに突然だったので、こうしてコメントさせてもらいました!また、セキトさんの作品が何かしらの形でまた読めたらなと思っています!待ってます! (2019年2月19日 23時) (レス) id: f96d082395 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セキト | 作成日時:2018年9月10日 14時