15話 ページ15
道路沿いを少しいくと、奥まった場所に住宅街が広がっている。車の騒音も聞こえないし、本当に静かな場所だ。
住宅街の入り口に着くと、男達は足を止めた。どうやらここで待つらしい。中にまで入り込まなくてよかった。もしも何かあった時に、周りに誰も居なければ助けも呼ぶことが出来ないからだ。
喧嘩には少々自信のある俺だが、大人でボディガードとして雇われている4人に一斉にかかってこられたら、勝てるかどうか分からない。
「A、大丈夫か?」
小さな声でも届くほどの距離を詰めても、男達は何もしてこなかった。Aに声を掛けると、申し訳無さそうな顔をして小さく頷く。
「ショーター、ごめんね」
ああ、全くだ。なんで俺に知らせなかったんだろう。もし分かっていたら一緒にやり過ごすかその場から逃げたのに。そう言いたかったが、俺も喋っていてあいつの行動を把握しきれていなかった。でも自分に対する叱咤と、Aへのお小言は後だ。
まずAの母親と話をする。
何故今の今まで捜索願を出さなかったのか、それをまず問い正す。もし正当な理由がなければ俺はこいつを母親に返す気が一切ない。早く届けが出ることを望んでいたのに、音沙汰一つもなかった。なのに、見つかったから会いに来るなんて、いい気がしない。
身体には小さな擦り傷しかなかったから、虐待などはしてないかもしれないが、おとなしいこいつが逃げ出そうなんて考える環境下なのはきっと間違いない。
頭の中でなんて言ってやろうかと考えているうちに、一台の黒い車が目の前で止まった。
運転手が中からでてきて、後部座席のドアを慣れた様子で開ける。するとそこから現れたのは、ブロンドの髪をした女性だった。胸元まで伸びた髪を揺らしながら、車から出てくると、すぐにAの事を抱きしめた。
「A!ああ、会いたかったのよ」
Aは大人しく、女性に抱かれているが、その体は硬直したように動かず、手は自分のズボンを掴んで居る。
「なあ、あんたAの母親か?」
感動のご対面と言いたいところだが、あいつの行動を見ると全くそんな気がしない。俺は見ていられず、女性に話しかけた。
「あなたは…」
「Aの友達だ、それであんたは?」
「まあ!お友達が出来たのね!良かったわねA」
「質問に答えろよ。それにそいつあんたに会えて嬉しく無さそうだぜ」
女性は、え?という顔をしたが、すぐに笑顔になると、あいつを離して俺の方へと体を向けた。
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ash - はじめまして、以前よりセキトさんの作品を楽しく見させて頂いている者何ですが、まさか作品が見られないような状態なっていたのでとても心配しております。もう、セキトさんの作品を見ることは出来ないのでしょうか?他の場所での活動をしているんですか? (2019年5月14日 7時) (レス) id: 85f7c1b244 (このIDを非表示/違反報告)
セキト(プロフ) - 紗衣さん» お久しぶりです。いつも素敵たコメントをくださって本当にありがとうございます!とても励みになっておりました。またお目にかかることができましたらまたよろしくお願いします! (2019年2月27日 17時) (レス) id: 6cf70c12a7 (このIDを非表示/違反報告)
セキト(プロフ) - みんてぃあさん» はじめまして、お返事が遅くなりすみません。突然のことで驚かせてしまって申し訳ありませんでした。またどこかでお目にかかることがありましたらまたよろしくお願いします!好きと言っていただけて、とても嬉しいです! (2019年2月27日 17時) (レス) id: 6cf70c12a7 (このIDを非表示/違反報告)
紗衣(プロフ) - セキトさんのお話が大好きでいつも読ませていただいていました!またこうしてセキトさんの話を読むことができて嬉しいです。またセキトさんの作品が読めることを楽しみにしています! (2019年2月26日 20時) (レス) id: 72ad67f590 (このIDを非表示/違反報告)
みんてぃあ - セキトさんの作品大好きです!いろいろあったみたいで、作品楽しみに読んでいたのですがあまりに突然だったので、こうしてコメントさせてもらいました!また、セキトさんの作品が何かしらの形でまた読めたらなと思っています!待ってます! (2019年2月19日 23時) (レス) id: f96d082395 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セキト | 作成日時:2018年9月10日 14時