１話 (少年期編） ページ1
ショーターside
その時は突然だった。
俺は雨が降っている中、姉貴に頼まれて食材の調達に行っていた。普段はお世辞にも繁盛している店でもないのに、今日に限って客が入れ食い状態で、ついに食材が切れそうになって、切れてからでは遅いと、この土砂降りの中、店をはしごしながら買い込んでいた。
「ったくなんでこんな日に客が来やがるんだ？」
まあ、店が繁盛することはいいことなんだが…。
「あーくっそ…こんな時に油切れとかツイてねぇ！」
土砂降りに加えて、愛車のバイクが油切れになり、重い荷物を乗せたまま動かないバイクを押して歩いていた。ヘルメットをしているからまだ頭は濡れないが、服がずぶ濡れになり、体も冷えて鉛のように重い。
あともう一軒だけ回ったら帰ろうと欲を出したのがいけなかったのか？いやまて、これだけあれば姉貴も大喜びだろう。それならそれでいいじゃないか。
そう思いながら重い体とバイクを引きずって、何度めかの曲がり角を曲がろうとした時だった。白っぽい何かが飛び出してきてそのまま地面に転がった。
「うおっ！な、なんだ…？！」
転がったものに目をやると、自分と同じようにずぶ濡れになった子供が地面に倒れ込んでいた。服はところどころ破けている。
「お前、大丈夫か？」
バイクを止めて起こそうと近づくと、急に体を起き上がらせてこちらに振り返った。俺はその顔をみて息をのんだ。
その子供は見たこともない紫色の瞳をしていたのだ。宝石のように透き通ったその色は怯えているのかゆらゆらと揺れ動いている。それがまた美しいとさえ思ってしまいそうだった。
「あ、その…だ、大丈夫か？」
「た、助けて…！」
「？！」
「おい！こっちに逃げてったぞ！」
助けを懇願されたあとすぐ、声にかぶさるように男の声が近くから聞こえた。俺はとっさにかぶっていたヘルメットと上着を子供につけさせてバイクの椅子に座らせて、何事もなかったように先ほどと同様油の切れたバイクを押し始めると、慌てた様子で男がこちらに走ってくる。気付かれないよう平然を装って通りすがろうとすると、その男の中の一人が話しかけてきた。
「おい、こっちに子供が走ってこなかったか？」
「いや？あー…」
「なんだ？」
「そこの角を曲がったときに誰かとすれ違ったかもしれねぇ……な？」
俺は座席に座る子供に声を掛けると、うんうんと頷くようにヘルメットが上下した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 76人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ash - はじめまして、以前よりセキトさんの作品を楽しく見させて頂いている者何ですが、まさか作品が見られないような状態なっていたのでとても心配しております。もう、セキトさんの作品を見ることは出来ないのでしょうか？他の場所での活動をしているんですか? (2019年5月14日 7時) (
レス) id: 85f7c1b244 (このIDを非表示/違反報告)
セキト(プロフ) - 紗衣さん» お久しぶりです。いつも素敵たコメントをくださって本当にありがとうございます！とても励みになっておりました。またお目にかかることができましたらまたよろしくお願いします！ (2019年2月27日 17時) (レス) id: 6cf70c12a7 (このIDを非表示/違反報告)
セキト(プロフ) - みんてぃあさん» はじめまして、お返事が遅くなりすみません。突然のことで驚かせてしまって申し訳ありませんでした。またどこかでお目にかかることがありましたらまたよろしくお願いします！好きと言っていただけて、とても嬉しいです！ (2019年2月27日 17時) (レス) id: 6cf70c12a7 (このIDを非表示/違反報告)
紗衣(プロフ) - セキトさんのお話が大好きでいつも読ませていただいていました！またこうしてセキトさんの話を読むことができて嬉しいです。またセキトさんの作品が読めることを楽しみにしています！ (2019年2月26日 20時) (レス) id: 72ad67f590 (このIDを非表示/違反報告)
みんてぃあ - セキトさんの作品大好きです！いろいろあったみたいで、作品楽しみに読んでいたのですがあまりに突然だったので、こうしてコメントさせてもらいました！また、セキトさんの作品が何かしらの形でまた読めたらなと思っています！待ってます！ (2019年2月19日 23時) (レス) id: f96d082395 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：セキト | 作成日時：2018年9月10日 14時
