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「うおーー、寒い」
「結構遠くまで来たねえ」
今日は旅行初日ということで、俺は朝5時に河村に叩き起こされて訳も分からないまま電車に乗せられた
「で、結局何処に行くの？」
「それはまあ、着いてからのおたのしみと言うことで」
極度の方向音痴な俺は今どこにいるのか皆目見当もつかないが、段々と都心から離れて行っているらしく視界からはビル群が消えてあっという間に山ばかりになった
「この電車が13時に終点について、13時半に特急に乗り換えだから終点で駅弁を買おうかなって思ってる」
「あー、いいじゃん。ちょうどいい時間だね」
朝ごはんの代わりに乗り換えのホームの自動販売機で買ったコーンポタージュを啜った。寒い中で食べると余計美味しく感じる
「てか、電車動いてるんだね」
「まあ、もうほとんどの車両が自動運転に切り替わってるからなあ、でもまだ働いてる人もいるらしいですよ？」
「へー…偉いね」
かく言う俺達も動画の撮影こそ止まったものの、ストックを毎日投稿し、記事はちゃんと書き続けているから似たようなものなのかもしれない。どこにでも「日常」を変えたくない人は一定数存在するらしい
「あ、次が終点だ。お弁当買って、乗り換えです」
「ええ？あとどれっくらいかかるの？」
「ざっと4時間」
「ええ？海外にでも行くの？」
「まあそんな所」
「適当だなあ」
軽口を交わしながら車両を降りて弁当を選んだ。ステーキ弁当が美味しそうだったので手に取った。彼の「野菜を食え」という言葉は聞こえてないフリをした
「はい、ここが目的地です。お疲れ様でした！」
「うわーー、やっと着いた！！長かった……」
「かなり遠くまで来たな」
「温泉だったんだね、目的地」
「旅行といえば温泉でしょう？」
「まあ確かに、それはあるね」
彼も俺も着いた時にはヘトヘトで、案内された部屋で2人して布団に倒れ込む
「へへ〜」
「なんだ福良、疲れておかしくなったか？」
「人のことをなんだと思ってるの！」
「すまんすまん」
「いや、旅行悪くないかもなって」
「お、それは良かった」
「河村と一緒なら、楽しいかもしれない」
友達との旅行はどこか気を使うこともあるし嫌いだったが、愛する人との遠出は意外にもとても楽しかった。何より、彼の楽しそうな顔を見れるなんて最高だ、というのが本音だ
「温泉、明日朝入ろうか」
「そうだね、今日はとりあえず寝たい」
「おやすみ、福良」
「おやすみ、河村」
彼の腕の中で目を瞑った
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作者名：めろんぱん | 作成日時：2020年12月10日 2時
