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「ただいま我が家…!」
やっと彼が俺たちの家に帰ってきた。事故で足に大きい怪我を負った彼は車椅子での生活を余儀なくされた
「これじゃあ1人でお風呂入れないなあ」
「はいはい。後で一緒に入ろうか」
彼は何も言わずに笑顔で大きく頷いた。リビングに置いてある観葉植物も心做しか彼の帰りを出迎えているように見える
「あ、俺ちゃんと料理できるようになったんだよ」
「言っとくけどカップラーメンは料理じゃないですよ?」
「失礼だなあ」
彼が入院してから俺は必死に料理の練習をした。たった数日ではあるがその割には上出来のはずだ
「病院で、優しい食べ物にしろって言われてたから。お粥作ってみたんだけど…どうかな?」
「梅干しで頼んだ」
「そう言うと思って買っといた。塩分濃度は?5と8と10と18があるけど」
「……………8」
「了解」
何か言いたげな彼を笑顔で遮る。彼が帰ってくるのが嬉しくて気づけば沢山材料を買い込んでいたことなど、俺の知ったことではないのだ
「ほら、口開けて」
「お、食べさせてくれるのか」
「怪我人だからね、特別特別」
「…怪我してよかったかも」
「黙って食べて」
猫舌の彼は口の中で少し冷ましてから嚥下した。白い首元ががこくん、と動いた。入院してから更にやせ細った彼はとても儚い存在のように思えた
「ちゃんとお粥だ…」
「まあ、炊飯器に米と水入れるだけだからね」
「偉いぞ!褒めて遣わす」
「俺の事子供だと思ってるでしょ」
偉い偉い、と彼は俺の頭をくしゃくしゃと撫でた。結局彼はその日一口も自分で食べることなく俺に運ばせた。次の日に俺の腕が若干筋肉痛になったのは言うまでもない
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作者名:めろんぱん | 作成日時:2020年12月10日 2時