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「寝てた…」
あれからどれほど時間が経ったのか、僕は大分眠っていたらしい。体は随分楽になっていた。起き上がったと同時に額から落ちた手ぬぐいは、すっかりぬるくなっている。
「あ」
すぐそばのローテブルに、Aさんが顔を伏せていた。ずっと看ててくれたのか、ブランケットだけ羽織っている。そっと、顔を覗き込むと、やはりすやすやと眠っていた。
太陽が昇り始めた時間なのか、あたりはほんのりと明るみ始めてる。早朝の静寂は、まるで世界には僕と彼女の二人しかいないと錯覚させるくらいで。
そろっと彼女の頭に手を伸ばそうとしたときだ、
「ただいま！Aいる！？」
その静寂を裂くように、ジヘヌナが慌ただしく入って来た。驚いて、咄嗟に手をひっこめた。
ていうか…
「ヌナ…ボクへの心配はなしですか？」
「ん？あぁ…セフンいたんだっけか。」
「ひどい…」
「う…うーん？あれ？チエちゃん？」
「A！」
「ふぎゃぁ！」
Aさんが起きると、ジヘヌナは勢いよく彼女に飛びついた。…Aさん、生きてる？
「良かった無事で！セフンに何もされてないわね？」
「されるわけないでしょ！…あ！」
Aさんはジヘヌナの腕からするっと抜け出すと、慌てたように僕に体を向けた。そして、
「わ！？」
「セフンくん大丈夫？もう平気？」
心配そうに僕の額に手を当てる。てか近いよAさん…あ、Aさんの背後のジヘヌナの顔怖い。
「良かった。セフンくんの熱下がった。」
ほっと息を吐くAさん。本当に心配してくれてたみたい。…嬉しい。
『Aー？あんたの目の前にいるの、一応イケメンだけど？』
『…は！』
ジヘヌナ何か日本語で言ったけど…なんだろ？Aさん、なんか一瞬固まった？
「Aさん、ありがとう。」
「あ、いえいえそんな…わたしこそありがとうね！」
何が？と首を傾げても彼女はにこにこだ。Aさんが嬉しそうなら…いい、かな？
「さて、セフン宿舎戻るわよ。」
「あ、はい……ヒョンたちからお説教かな？」
「病み上がりだし、手加減してくれるわよ。」
「お説教は避けられないんでとぅね…」
だからなんでこんなどーでもいいところで噛む僕。
「セフンくん、お大事にね？」
「Aさんまた授業でね。」
「うん。」
彼女は嬉しそうに笑う。この笑顔、好きかも。
ちょっと名残惜しいけど、ジヘヌナに急かされ車に乗り込んだ。乗ってる間はヌナの小言が続いたけど、僕は適当に聞き流しておいた。
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作者名：ときみず | 作成日時：2015年1月5日 15時
