5. ページ5
.
「うまっ！これめっちゃうまいっすね！」
「優太…なんでここにいるのよ…」
「えー？Aが寂しくしてないかなー？と思って！」
「はぁ？それは自分でしょー！？」
いつものように小競り合いをはじめた私たちをぽかーんと紫耀くんが見つめる。
私は慌てて、「あ、ごめんね。紫耀くん。こいつがうるさくて…」と紫耀くんに謝った。
「は、紫耀くん？」
「2人は仲良いんやね？Aちゃんの彼氏？」
「は、Aちゃん？」
いちいち会話に突っかかってくる優太を無視して、「ち、違うよ！こいつはただの幼なじみの岸優太！」と弁解する。
「そうなんや〜。幼なじみとかええな〜」
ほわーんという効果音がつきそうなほど、優しく微笑んだ紫耀くんを優太はなぜか「こいつ誰？」と睨みつけた。
そんな優太に表情を崩すことなく、紫耀くんは「Aちゃんの友達の平野紫耀といいます」とペコリと頭を下げる。
丁寧に挨拶されて我に返ったのか、優太もさっき私が紹介したにも関わらず、「俺は岸優太と申します！」と頭を下げる。
「あ、岸くん。ぬれおかきもっと食べる？」
「いいんすか！？あざっす！」
さっきまで紫耀くんのことを怖い顔で睨みつけていた優太はどこにいったのやら、今は2人でぬれおかきを食べながら談笑している。
ああ、この2人似てるんだ。
天然なところが…
そこにチャイムが鳴って、優太は「A、紫耀！またな！」と言いながらバタバタと自分の教室に戻っていった。
「ふふ。岸くんおもろいな？」
「そう？うるさいだけだよ〜」
「羨ましいな…」
「え？」
「Aちゃんと岸くんみたいな関係」
そう言って紫耀くんは、フッと微笑んで視線を私から教室に入ってきた先生に移した。
その時の私は、紫耀くんのことを何も知らなかったんだ。
紫耀くんの言葉の意味も、今にもどこかに消えていってしまいそうなほど悲しげに歪んだの横顔の意味も。
何もかも、知らなかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 516人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
由良(プロフ) - 早く続きが見たいです！少し汗ばむ季節になり体調の変化が激しくなりますがお身体に気をつけてくださいね更新楽しみにしています (2018年6月14日 21時) (
レス) id: 3c3c648279 (このIDを非表示/違反報告)
優美(プロフ) - 紫音さん» 紫音さんコメントありがとうございます。温かいお言葉ありがとうございます！素敵な作品になるよう頑張ります！ (2017年5月19日 21時) (レス) id: 9785910bbc (このIDを非表示/違反報告)
優美(プロフ) - 紫友さん» 紫友さんコメントありがとうございます。あそこは物語の中の一つのキーワードとなる場面なので、そう言って頂けて嬉しいです(*´ω｀*) (2017年5月19日 21時) (レス) id: 9785910bbc (このIDを非表示/違反報告)
優美(プロフ) - ピナパルさん» ピナパルさんコメントありがとうございます。これからも楽しんでもらえるよう頑張りますね！ (2017年5月19日 21時) (レス) id: 9785910bbc (このIDを非表示/違反報告)
紫音 - この作品好きです！面白くて、続きが気になります！！楽しみにしてますね！ (2017年5月18日 22時) (レス) id: 5512444c65 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：優美 | 作成日時：2017年5月12日 1時
