編集長が恋に落ちた場合【セカロマ】 (ページ26)

今日:1 hit、昨日:28 hit、合計:58,656 hit

第26話ページ26

Aside

私はというと・・・

先ほど高野さんから連絡が入り、羽鳥さんが持って行った原稿の入稿が確認でき次第羽鳥さんとこの会議室まで来るので吉野さんと待っているようにとのことだった

たぶん家まで送ってくれるのだと思うけれど、さすがにこれは無理がある

初対面であり漫画家として大先輩の吉野先生と2人っきりだなんて、まったくもってどうしていいかわからない

アシスタントさんがいなくなって数分も経っていないはずなのに気まずくてしょうがなかった

あ「あ、あの・・・なにか飲みますか？買いに行って来ようと思うんですけど、吉野さんの分もよかったらついでに」

吉野さんは一瞬、いえ、と声を出したが、迷ったような表情をした後に

吉「じゃあ、コーヒーお願いしてもいいですか？」

と私に言った

あ「了解です」

買いに行かせるのに気が引けたのだろうけれど、この沈黙には吉野さんも我慢できなかったのかもしれない

私はなるべく時間を費やすように自動販売機へと向かう

しかし、ものの数分後には吉野さんと2人っきりの会議室に戻っていたのだった

だけど、部屋に戻ってコーヒーを渡すと、吉野さんが私に声をかけてくれた

吉「Aちゃんはさ、今大学生なんだっけ？」

あ「はい、M大学の4年生です」

吉「そっかぁ、すごいな・・・俺も最初大学行ったんだけど、退学しててさぁ」

あ「私なんかまだまだです・・・吉野さんの方がすごいですよ？！お話も面白いですし、絵も綺麗です。さらに映画化も決まっていて、ほんとに尊敬しています。大学生の頃から売れていたなんて…」

吉「いや、俺ほんと容量悪くてさ。ただ、勉強と漫画の両立できなかったっていうか…ほとんどの事トリに頼りっぱなしだし、トリいなかったら俺どうなってたんだろ…」

あ「トリって、羽鳥さんのことですよね？」

吉「あ、そうそう。幼なじみでずっと一緒にいるんだ。トリが担当になった時は本当に驚いたけど…」

あ「えっすごいですね！？幼なじみが担当編集者…、なんだかステキです！運命みたい」

すると、吉野さんが頬を赤らめた

吉「え、いや・・・うん、そうだね・・・運命、か…」

どうかしましたか？と訊こうとしたがその声はノック音に遮られる

失礼します、という声と共に高野さんと羽鳥さんが部屋に入ってきた

もう少しだけ話したいと思っけど、迎えが来てしまった

私は高野さんに連れられ、羽鳥さんと吉野さんに別れを告げて会議室を後にした