【H×H】世界はいつも無感情 2 (ページ20)

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67.変化ページ20

他の人の力を借りないで何でも出来る強い彼女は今、自分の力を借りなければ何も出来ない。

そんな事実にパリストンは少しの優越感を感じていた。

その感情の根本は分からないが、
ただ、彼女にとって自分は少なくとも他人より信頼されていると思ったから優越感を感じているのだとパリストンは思ったのである。

Aを横抱きにして冷たい風を感じながら協会本部まで運んでいると
外へ出ていた社員達が此方を見て驚愕で目を見開いているのが見えた。

Aは既に顔を見られないようパリストンに肩口あたりに顔を埋めている。

すると彼女の女性らしい香りがパリストンの鼻にふわりと入ってくる。

(良い匂いですねって言ったらパンチとんでくるかなァ・・・)

パリストンがそんな呑気に考えていると
協会本部の入り口に普通の人間とは違う威圧感を纏った人影が一つ見えてきた。

ネテロだ。

どうやら操縦士が連絡をつけてくれていたようだった。

「会長、ただいま戻りました」

「うむ。Aが倒れたと聞いておったが・・・まさか、それかのぉ」

それ、とパリストンに顔を埋めたままのAを指差す。

「そうですね」

「ふむ、まぁAはこのまま自室に運ぼうかの。それにしても随分時間がかかったようじゃが？」

「・・・ネテロさん、ごめんなさい」

突然Aは肩口から顔を上げパリストンの腕からするりと降り、ネテロを真っ直ぐ見据えた。

「Aさん？」

「全部私の責任だから、予定されてた副会長の仕事は私が何とかする」

Aの言葉は先程までの弱々しさを全く感じさせない言葉だった。
ふーむ、と髭を弄りだす育ての親から目を逸らさない。

「いや、この件はワシが何とかするから気にすんな」

「・・・」

「そんなに後ろめたいんじゃったらワシにお茶を用意してくれんかの？それで全部チャラじゃ！」

まだ何か言いたそうなAにネテロお得意食えないジイさんの惚けた言葉がウインクと共に放たれ、
Aは渋々協会本部に入っていったのだった。

しかしそのあとについていこうとするパリストンをネテロは止める。

「どうかされました？」

「おぬし、Aを遊び相手か秘書として見ておるかの？」

「・・・当たり前じゃないですか。
Aさんはボクの大切な秘書で大切な友人ですよ？」

では、とAについていくパリストンの影が見えなくなるまで、ネテロはただじっとハンター協会本部を見つめていた。