世界一不幸で、幸せ者な君へ＊2 (ページ2)

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星空バスページ2

＊

慣れ、というものは恐ろしい。

今まで普通じゃなかったことが、
日が経つに連れ普通になる。

俺の場合、片目の視力を失ったことがそれに当たる。

「おい髙木！」

俺は持っていた鉄骨をその場に置くと、
声がした方へ足を運ぶ。

右側に進むと、
さっきまで見えなかった小さな丸い人影が、
俺を見上げて立っている。

「高木、言われたこと覚えてるか」

「はい」

「俺はあれを右側に置けと言っただけだ、
なんでそんなに時間がかかる」

「それは、」

「だから馬鹿は嫌なんだよなぁー」

小さいおじさん＝現場監督は、
わざとらしく声を張った。

鉄骨がぶつかり合う中に、
クスクスと嘲笑う声が聞こえる。

「髙木くんさぁ、なんでそんなに言われたことできないの？」

現場監督は俺の目をしたから睨みながら、
冷たい声で言い放った。

「もう、早く辞めなよ。
その方が君のためにもなるよ？」

現場監督は嘲笑すると、
俺の前から去っていった。

俺は悔しくて、
手のひらをぎゅっと握りしめた。

泥と汗の匂いが染み付いた作業着を、
脱ぎ捨ててゴミ箱へと投げ捨てた。

今日限りで、
こんなとこ辞めてやる。

俺は着替えてロッカーの戸を思い切り閉めると、
荷物を持ってバス停へと向かった。