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「今日の道徳、いつもより難しくなかった？」
道徳の教科書がプラスされて重くなったランドセルを背負う、
でもまぁ、正直道徳のときの話なんて全く覚えていない。わたしは持参した自由帳にずっと絵を描いていたから。振り返りなんて教科書をそっくりそのまま移せば花まるが付くんだから楽勝だ。
美水ちゃんとわたしが話す内容と言えば、漫画、ゲーム、アニメ、曲……。わたしが勉強嫌いなのを知っているから、美水ちゃんは学校での話をしない。優しさが会話に滲み出ている。
なのに学校の話題を出すなんて意外だ。よっぽど美水ちゃんの心に突き刺さったのか。
必死に五時間目の内容を思い出そうとしたけど、全く思い出せない。覚えているのは、完成した絵と、カブトムシの消しゴムを寄越せと強いる、お子ちゃまな
無理だ、とわたしは諦めた。でもどこかで美水ちゃんは泊まってくれるはず。そう思った。
でも、わたしの家が近付いて来たというのに、美水ちゃんは一向に道徳のストーリーのお話をやめない。混乱とほんの僅かな苛立ちが混じった頭でも、テーマが『家族』だということはなんとなーく理解することができた。
「……え？
「うん、そうだよ。じゃあ、また明日ね。ばいばーい」
美水ちゃんのばいばーいを聞く前に、わたしは家に駆け込んでおかえりを強要した。お母さんが柔らかい声でただいまを発したのを確認してから、自分の部屋で乱暴にランドセルを漁った。ピンクが強調された道徳の教科書を取り出す。
家族、家族……あった。三十九ページ。そのページへ飛ぶと、見覚えのあるイラストが目に入った。ああ、こんなイラスト描いてあったな。自分の授業態度が悪いことを改めて実感する。
わたしは、長い文章にうんざりしながらも、ストーリーを読み始めた。
＊
「えっ、えっ……え？ 嘘だ、違う、おかしいよ！」
読み終わった後の余韻に浸った後、内容を思い返す。ふと考え付いたことがあった。それは信じられない、信じたくないことで。わたしは勢いに任せて教科書を床に叩きつけた。たくさんのページが折れ曲がるのがわかる。
誰に言うでもない否定の言葉が口から漏れた。次第に、目尻に生温い液体が浮かんでいく。それはわたしの頬を伝って、カーペットを濡らした。
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sekai(プロフ) - 00さん» 感動してくれたようで、とてもよかったです。こちらこそ、読んでくださってありがとうございました。 (2022年3月19日 21時) (
レス) id: fc98665df2 (このIDを非表示/違反報告)
00 - 感動した！最後の主人公の台詞、道徳のストーリーの台詞と同じでも、気持ちを伝えられたから良かったなって思いました。作品を作って頂いてありがとうございます!! (2022年3月19日 21時) (レス) @page6 id: 708338e771 (このIDを非表示/違反報告)
sekai(プロフ) - ねこもちのいえさん» こちらこそ、素敵なイベントありがとうございました。面白いと言ってくださって嬉しいです。コメントありがとうございました。 (2022年3月19日 15時) (レス) id: fc98665df2 (このIDを非表示/違反報告)
ねこもちのいえ(プロフ) - イベント参加ありがとうございました！浮気じゃなくてよかったけど、悲しいお話ですね....小学校のときにその話をされるとは....面白かったです！ (2022年3月19日 14時) (レス) @page6 id: 4975fb6260 (このIDを非表示/違反報告)
朱まぐ(プロフ) - sekaiさん» お返事ありがとうございます。少しひっかかりましたがそう言うことだったのですね。お手数かけてしまいすみません。あと、よく読んでくださっているなんてとても嬉しいです！ありがとうございます (2022年3月18日 19時) (レス) id: 70ac09f88c (このIDを非表示/違反報告)
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