４メートル ページ4
・
容赦も遠慮もない奴め。
「そろそろ愛を叫びたーい！と、さっき思った」
「バカ。単細胞」
あんたの脳内はそれしかないのか。
「え⋯⋯A、まだ怒ってる⋯⋯？」
単細胞は目を丸くする。
「怒ってはいない」
「え、あ、そうなの」
さすがにこのタイミングで「絶対怒ってるだろ！」とぎゃあぎゃあ騒ぎ立てるほどコドモではないらしい。私の気持ちを察してくれるほどオトナでもないけれど。
「ていうか木兎、それしか考えてないよね」
高校３年生にしてはかなり大きい体で、それなのに小学生みたいに私の顔色を窺ってくる。
あかーしくんも大変だよなあ、なんて、思う。
「おう！世界の中心が分かったら、すぐにでも愛を叫びたい！」
ぱっと目を輝かせて⋯⋯ほんと、コドモだ。
「それって、告白？」
喉の奥から声を絞り出して、木兎から目を逸らして、訊いた。
「⋯⋯おおお、確かにそうかもな！！」
私の気なんて知らずに、こんなに笑って。
もう知らない、許さない、って何度顔を背けてみても、やっぱり木兎の笑顔には胸がきゅっとなる。
そんな私も大概馬鹿なのだ。
「ねえ、その子ってどんな子？」
馬鹿はどうあがいても馬鹿なんだ、と思う。
「秘密って言ったろ！」
つまりそれは、木兎はずっと単細胞で、私もずっと木兎が好きで、なにも変わらないということ。
「いいじゃん、その子の特徴とか、ヒントだけなら」
木兎は「うーん」と首を傾げてから、
「わかった、ヒントだけ！」
「⋯⋯誰なのかは、やっぱりだめ？」
何も、変わらないのなら。
「じゃあ、コウカンジョウケンな！」
「え、なに？」
「Aは世界の中心を考える。で、いいのが思いついたら、俺はそこで愛を叫ぶ。そしたら分かるだろ？相手が誰なのか」
変えにいくしか、ないじゃない。
「⋯⋯オッケ―、じゃあ考えとくね」
「おう、頼んだぞA！」
「ちゃんと教えてよ？」
「もちろんだ！」
木兎の、ばか。
好きなのにさ。
木兎のこと、ずっと見てるのにさ。
もう、最高の場所、考えてやるんだから。
にこにこと笑う木兎を無視して、机に伏せる。
仕方ない、のだ。木兎には好きな人がいて、私は木兎が好きで、でも木兎が好きなのはきっと私じゃなくて。
愛を叫びたい、だなんて。
彼らしい発想を、彼の望みを、彼の恋を、応援、しなくちゃいけない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 150人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ティラミルク(プロフ) - おこめさん» 返信が遅くなり申し訳ありません。夏目漱石のこころ、いいですよね(*'▽')読破済みの方と出会えてうれしいです！二回も高評価を……何とも嬉しいお言葉！かっこかわいい木兎さんをお届けできたようでなによりです。コメントありがとうございました。 (2020年6月26日 23時) (
レス) id: 5de232f7c7 (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - 本当にいい作品です!!夏目漱石のこころ、私も読んだことあります!!あああああああああもう木兎さんがカッコよすぎます！それでいて可愛いです。つい勢いで1番いい評価2回も押してしまいました笑 (2020年5月19日 9時) (レス) id: 4a878294b2 (このIDを非表示/違反報告)
ティラミルク(プロフ) - 百合郷さん» コメントありがとうございます(*^^*)こんなにお褒め頂けるなんて恐縮です！少し先の話になってしまいますが、そのうち番外編を追加する予定なので、よろしければその時も見て頂けると嬉しいです(*'▽')木兎さんのキャラがつかめていたようで良かったです(笑) (2019年12月16日 18時) (レス) id: edef360b1e (このIDを非表示/違反報告)
百合郷(プロフ) - 完結、お疲れ様でした！遅ればせながらも、最終話まで拝読させていただきました。題名と内容がとても考えられたもので、木兎さんの台詞が本当にそれっぽいなぁと、楽しませてもらいました。素敵な作品をありがとうございました！ (2019年12月15日 23時) (レス) id: 5fdd484f6d (このIDを非表示/違反報告)
ティラミルク(プロフ) - 優麻さん» かっこいい木兎さんを感じていただけて良かったです！ありがとうございます！ (2019年11月20日 22時) (レス) id: 9b0bde0b73 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
