√５メートル ページ23
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今度こそ放心しきって帰宅すると、エナメルバッグから取り出した携帯に着信があった。
黒尾：大丈夫か〜
ヤバいかもしれない。そう返信すると、あっという間に既読が付く。
黒尾：なに、彼女となんかしたの？
木兎：いや、キスしたどうしよう
ポン、と画面にメッセージが表示されて送信完了、同時に「既読」の文字が付いて、返信を待つこと数分。
通話の着信を知らせるメロディが大きく鳴って、ディスプレイに「黒尾鉄朗」と表示された。
「ハイ」
『ヒャッヒャッ、おま、木兎、うぶなの？！』
「⋯⋯」
何を失敬な。こっちはこの重大な問題に頭を抱えているというのに。
『赤葦から聞いたぞ、嫌われそうで手ぇ出せなかったんだってな』
「⋯⋯違わなくもない」
精いっぱいの返答を黒尾はまたしても笑い飛ばす。
『まあアレだ、気負うなあんまり』
アレってどこのドレのことだ。
『誰でも通る道だろ』
「いやでも」
『お前結構慎重なのな？もうちょい豪快でもいいと思うぞ』
言葉の間に笑い声が見え隠れしている。
なんだろうこれ――不快だ、とでもいえば的確な表現になる感じだ。
『いや、でもマジでさ』
ふ、と笑うような震えが消える。
『むしろまったく手ぇ出さないほうがカノジョちゃんは不安だろうよ』
「⋯⋯そう？」
『うん、そりゃ限度はあるだろうけど、まだまだ一個ずつステップアップしていいんじゃねえの？』
マジメなトーンに「うん」と相づちを打つと、
『そろそろ切るぞ』
もとの明るい声に戻って黒尾は言った。
一個ずつ。
まだ上がってしまっていいのだろうか。
バニラの甘い匂いを思い出して思わずため息を零してから、ふっと息を吸った。
「ありがとな、黒尾！」
『へいへい、せいぜい爆ぜてくださいリア充さん！』
最後のは最高の鼓舞だった。それが分からないほど俺はバカじゃないし、黒尾との付き合いも浅くはない。
携帯を放り出して寝転がった。
そうか、ステップアップ。
まだ上がってしまっていいのだ、きっと。
ふわふわと軽くなった心持のまま携帯を再び手に取って、Aとのメッセージ画面を開いた。
木兎：今度の日曜、どっか遊びにいこうぜ！！！！！
次会う時には、たくさん笑おう。
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ティラミルク(プロフ) - おこめさん» 返信が遅くなり申し訳ありません。夏目漱石のこころ、いいですよね(*'▽')読破済みの方と出会えてうれしいです！二回も高評価を……何とも嬉しいお言葉！かっこかわいい木兎さんをお届けできたようでなによりです。コメントありがとうございました。 (2020年6月26日 23時) (
レス) id: 5de232f7c7 (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - 本当にいい作品です!!夏目漱石のこころ、私も読んだことあります!!あああああああああもう木兎さんがカッコよすぎます！それでいて可愛いです。つい勢いで1番いい評価2回も押してしまいました笑 (2020年5月19日 9時) (レス) id: 4a878294b2 (このIDを非表示/違反報告)
ティラミルク(プロフ) - 百合郷さん» コメントありがとうございます(*^^*)こんなにお褒め頂けるなんて恐縮です！少し先の話になってしまいますが、そのうち番外編を追加する予定なので、よろしければその時も見て頂けると嬉しいです(*'▽')木兎さんのキャラがつかめていたようで良かったです(笑) (2019年12月16日 18時) (レス) id: edef360b1e (このIDを非表示/違反報告)
百合郷(プロフ) - 完結、お疲れ様でした！遅ればせながらも、最終話まで拝読させていただきました。題名と内容がとても考えられたもので、木兎さんの台詞が本当にそれっぽいなぁと、楽しませてもらいました。素敵な作品をありがとうございました！ (2019年12月15日 23時) (レス) id: 5fdd484f6d (このIDを非表示/違反報告)
ティラミルク(プロフ) - 優麻さん» かっこいい木兎さんを感じていただけて良かったです！ありがとうございます！ (2019年11月20日 22時) (レス) id: 9b0bde0b73 (このIDを非表示/違反報告)
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