√3メートル ページ21
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「木兎さん、大丈夫ですか?」
顔を覗き込んでくるあかーし。
「どうしたお前」
と、黒尾。
「⋯⋯うん」
「大丈夫じゃありませんね、Aさん呼びましょうか」
「うん」
Aに会うのか――そうだ、約束。マッハで行くって。
「俺はやくいかないと」
「あれ、急に元気だな」
「ねぇもう行っていい?」
うずうずしてきた。こう、身体じゅうが熱くなって動き回りたい感じ。
「え、てっきりお前彼女とうまくいってないのかと」
「ああ、それは木兎さんが手を出せないだけです」
「あかーし!!」
なんだか失礼なことが聞こえてきたから叫んでみたけれど、走り出したら止まる気はないからそのままAのもとへ向かう。
「⋯⋯こうたろう」
いた。正門前の木陰で、涼し気な水色のタオルをかけた彼女。
「ごめん遅くなった!」
「ううん、ぜんぜん平気」
ふにゃっ、て。やっぱり笑った。
「行こっか」
「おう」
ひとまわりもふたまわりも小さな彼女と並んで、校門を出た。かわいい、ほんっとにかわいい。食べてしまいたいくらいに。
「ね、アイス買っていこうよ」
――木兎さんが手を出せないだけです。
ほんの数分前のあかーしの声が、脳内でぐわんと反響した。
「え、ん、うん」
「私何にしようかな〜、半分こしない?」
付き合い始めておよそ2か月、かわいい発言を投下することも増えてきた。
「いいな、やろうぜ!」
そう笑いながら返すと、今度はニコッと花が咲くような笑顔を見せてくれる。
学校から徒歩数分。全国どこでも見かける看板のコンビニに入ってモナカのアイスを買って、店先でパキッと割った。2等分にするつもりでいたけど、暑いからアイスで生き返るよねとキラキラ目を輝かせる彼女を見てしまったから、Aのぶんをこっそり少しだけ大きくしておいた。
「うわあおいしそ、いただきます!」
小気味よい音とともにモナカアイスが彼女の口に溶ける。甘い匂い。
「いただきます!」
俺もひとくち、齧りついた。ひんやりとしたバニラが爽やかで、少しだけ甘ったるい。
――彼女のほうから香って来たのと同じ、甘い匂い。
「どしたの?」
Aのほうを凝視していたらしい。話しかけられてはじめて気づいた。
俺は今、彼女に触れたい。
「――いや、その」
――手を出せないだけです。
怖くて。
嫌われはしないかと。もっと求めてしまうのではないかと。
傷つけはしないかと。
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ティラミルク(プロフ) - おこめさん» 返信が遅くなり申し訳ありません。夏目漱石のこころ、いいですよね(*'▽')読破済みの方と出会えてうれしいです!二回も高評価を……何とも嬉しいお言葉!かっこかわいい木兎さんをお届けできたようでなによりです。コメントありがとうございました。 (2020年6月26日 23時) (レス) id: 5de232f7c7 (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - 本当にいい作品です!!夏目漱石のこころ、私も読んだことあります!!あああああああああもう木兎さんがカッコよすぎます!それでいて可愛いです。つい勢いで1番いい評価2回も押してしまいました笑 (2020年5月19日 9時) (レス) id: 4a878294b2 (このIDを非表示/違反報告)
ティラミルク(プロフ) - 百合郷さん» コメントありがとうございます(*^^*)こんなにお褒め頂けるなんて恐縮です!少し先の話になってしまいますが、そのうち番外編を追加する予定なので、よろしければその時も見て頂けると嬉しいです(*'▽')木兎さんのキャラがつかめていたようで良かったです(笑) (2019年12月16日 18時) (レス) id: edef360b1e (このIDを非表示/違反報告)
百合郷(プロフ) - 完結、お疲れ様でした!遅ればせながらも、最終話まで拝読させていただきました。題名と内容がとても考えられたもので、木兎さんの台詞が本当にそれっぽいなぁと、楽しませてもらいました。素敵な作品をありがとうございました! (2019年12月15日 23時) (レス) id: 5fdd484f6d (このIDを非表示/違反報告)
ティラミルク(プロフ) - 優麻さん» かっこいい木兎さんを感じていただけて良かったです!ありがとうございます! (2019年11月20日 22時) (レス) id: 9b0bde0b73 (このIDを非表示/違反報告)
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