検索窓
今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:57,511 hit

9メートル ページ9



「……誰」


身を乗り出して来た木兎と私の間、そこだけ沈黙して、空気が固まったような感覚。

こんな表情の木兎を、初めて見た。

焦りとか、悲しさとか、怒りとか、そういうものを混ぜ合わせたような。
彼の顔はいつも素直だ。
けれど今まで、あっただろうか。
負の感情を抱えて、笑うことを忘れてしまったかのようにかおを歪めて、


「……誰?」


それはもう、コドモの表情じゃない。


「誰、だと思う?」

彼の視線は、私を捕まえて離さない。


「分かんねー」

「……そっか」


「分かんねーんだよ……」

「うん」




「チクショウ!」

「え、」

ガタン。
木兎が私の机に頭をぶつけて、拳をぶつけて、ペンケースが床に落ちる。

床に散らばったシャーペンを拾い上げると、私は木兎を見る。


「何が」

「いいじゃんかよ」

顔を上げる。
額が赤い。

「なぁ、俺じゃダメ?」

「……え」

「俺はAに、そんな悲しそうな顔させねえ!」


ちょっとだけ意地を張るような、つっけんどんな声だった。


昼休み修了のチャイムが鳴る。

いつもなら始業ぎりぎりまでペラペラ喋っている彼は、それ以上何も言わずに前を向いた。

10メートル→←8メートル



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (175 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
150人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ティラミルク(プロフ) - おこめさん» 返信が遅くなり申し訳ありません。夏目漱石のこころ、いいですよね(*'▽')読破済みの方と出会えてうれしいです!二回も高評価を……何とも嬉しいお言葉!かっこかわいい木兎さんをお届けできたようでなによりです。コメントありがとうございました。 (2020年6月26日 23時) (レス) id: 5de232f7c7 (このIDを非表示/違反報告)
おこめ(プロフ) - 本当にいい作品です!!夏目漱石のこころ、私も読んだことあります!!あああああああああもう木兎さんがカッコよすぎます!それでいて可愛いです。つい勢いで1番いい評価2回も押してしまいました笑 (2020年5月19日 9時) (レス) id: 4a878294b2 (このIDを非表示/違反報告)
ティラミルク(プロフ) - 百合郷さん» コメントありがとうございます(*^^*)こんなにお褒め頂けるなんて恐縮です!少し先の話になってしまいますが、そのうち番外編を追加する予定なので、よろしければその時も見て頂けると嬉しいです(*'▽')木兎さんのキャラがつかめていたようで良かったです(笑) (2019年12月16日 18時) (レス) id: edef360b1e (このIDを非表示/違反報告)
百合郷(プロフ) - 完結、お疲れ様でした!遅ればせながらも、最終話まで拝読させていただきました。題名と内容がとても考えられたもので、木兎さんの台詞が本当にそれっぽいなぁと、楽しませてもらいました。素敵な作品をありがとうございました! (2019年12月15日 23時) (レス) id: 5fdd484f6d (このIDを非表示/違反報告)
ティラミルク(プロフ) - 優麻さん» かっこいい木兎さんを感じていただけて良かったです!ありがとうございます! (2019年11月20日 22時) (レス) id: 9b0bde0b73 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ティラミルク | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年10月28日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。