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9話 ページ13

マレウスside IN ディアソムニア寮








2月15日…………





まだ冬だと言うのに、この日の風はいつも春風のように暖かい。





テラスに降り積もった雪を、僕の凍った心を溶かすように、優しく頬を撫でて流れていく。





マレウス「………また僕は、“君”より歳をとってしまった」





誰もいない庭を少し歩き、小さく呟いた。







「若様ぁぁーー!!」







談話室の方から、僕を探すセベクの声が聞こえる。





僅かにリリアとシルバーの声も。





皆が僕を探しているのなら行かなければならないのだろうけど……今はとても、人に会える心情では無い。









………Aが呪い(・・)にかかってから、今年でちょうど100年。





僕はもう、100年もの間彼女を待ち続けてきた。





何年も…何十年も………





一瞬だって、君を忘れたことなどない。





美しく、聡明で………





何よりも僕を信じ、誰よりも僕を愛してくれた。





そんな君と結ばれる日が来た時は、泣いてしまいそうなほど嬉しかった。





世界中が愛する彼女を、僕だけのものにできる。






それがどんなに幸せなことか…









あの時の僕は、まるでわかっていなかったんだ。









ゴロゴロ______






空が唸り声を上げ、雨雲は重く僕の背中を押しつぶすようだ。





マレウス「………A」





彼女の名前を呼ぶと同時に、寮の近くに稲妻が走る。





そしていつものように、大雨が降りはじめた。





テラスから出ると、案の定僕の体は雨に濡れる。









…そんなこと、もう気にもならない。









______僕はずっと後悔していた。









あの日、あの時、あの場に…









キミのいる純白の花園に…









どうして









“あんなもの”を置いてしまったのかと。









マレウス「………待っていてくれ、僕の眠り姫(オーロラ)









何十年、何百年時が経とうとも…









必ず、キミを見つけ出す。









そして、あの日の誓いを果たそう。









今度こそ………2人で。









マレウス「……A、僕は……」









不意に零れた涙は、雨に混じって、静かに滴り落ちていった。

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Rin(プロフ) - 続きが楽しみです 更新頑張って下さい (2023年4月20日 2時) (レス) id: a3128229fd (このIDを非表示/違反報告)
出雲(元あやりん) - 若様ァァァ!若様と誓いしていたなんて。おっし若様、アタシと結婚しまs((若様好きすぎて暴走してしまった。すk(((殴。すいません面白いですし、好きです (2021年10月22日 21時) (レス) @page21 id: afcb507146 (このIDを非表示/違反報告)
三月アリス  - めっちゃ好きです!マレウス様かわいい! (2020年9月7日 10時) (レス) id: 742f423e47 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 続き気になります。更新頑張ってください (2020年9月3日 17時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
ベル(プロフ) - え?めっちゃ好きです!!更新楽しみに待ってます! (2020年8月20日 17時) (レス) id: 61644e4b7a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:毘張 | 作成日時:2020年7月30日 1時

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