番外編10【太宰治誕】 ページ34
「あ、あの…国木田さん…」
「なんだ敦。」
「な、なんで太宰さん…あんなに不機嫌なんですか…」
「…Aに聞け。」
国木田くんのなんと自分勝手な事か。
私に聞いたって、彼が何故不機嫌なのかは分からない。
視線をこちらに向ける敦くんに、私は首を横に振った。
『太宰くん。』
「…なに。」
明らかに不機嫌だ。
ヘッドホンを首にかけ、長椅子に横になる彼は、無愛想に私の声に返事をする。
いつもの笑顔はどこへやら。今日はお決まりの心中にさえ、誘われていない。
『…何がそんなに気に入らないの。』
「…そんなことも分からないの?馬鹿だねぇ。」
『滅するぞ。』
こうやって聞いてみても、今日はとことん塩対応で。
誰も不機嫌の理由が分からない。否、乱歩さん以外だろうか。
乱歩さんだけは、彼の不機嫌の訳が分かるのだろう、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべ、私と太宰さんを観察していた。ねるねるねるぞを片手に。
「ねぇA。ほんっとーに分からないの?太宰が可哀想に思えてきたんだけど。」
『思ってませんよね、乱歩さん。』
「まぁね。でも、そろそろ分かっても良い頃でしょ?」
「そうだねェ、焦らしすぎはよくないンじゃないかい?A。」
『与謝野女医まで…』
医務室から出て来た与謝野女医までもが、私にそう声をかける。
…太宰くんは、夜まで待ってくれないようだ。
私は、自身の仕事机の引き出しを開け、長方形の綺麗に包装されたそれを、取り出した。
太宰くんの元へと向かう。
『太宰くん。』
「なぁに、A。私に何か用事かい?仕事なら国木田くんに___」
『治。』
相も変わらず塩っぱい彼の名前を呼べば、当の本人は愚か、社内の他の人間までもが動きを止めた。
待って、恥ずかしいんだけど。
『…治、お誕生日おめでとう。』
「…ふふ、その言葉を待ってたよ。ありがとう、A。」
『本当は夜に渡そうと思ってたんだけど。』
「プレゼントはわ、た、し。ってやつかい?それは勿体ないことをした!」
『お前ほんとに滅するぞ。』
「わぁ、怖い。」
たった一言。
「おめでとう」の一言だけで、彼が上機嫌になったのは、また別のお話。
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お気に入り100人越えありがとうございます!!
遅刻以上の大遅刻すぎる誕生日編でした…
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星矢/夜透田 流 @seiya_yasukida
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夜透田 流(プロフ) - 鏡の国のアリスさん» ひぇ…神作品だなんて…シリアス好きの衝動書きには勿体ないお言葉……ありがとうございます…!! (2019年10月27日 16時) (レス) id: 787493054e (このIDを非表示/違反報告)
鏡の国のアリス - 神作品に出会えた……!涙で滲んで画面が見えない事実ェ……(泣) (2019年10月27日 13時) (レス) id: 19bb89c399 (このIDを非表示/違反報告)
星矢(プロフ) - 太宰亜里沙さん» ありがとうございます!真逆、そこまで感動して下さるとは…作者も本作品も幸せ者ですね。最後まで読んでくださってありがとうございました!! (2019年5月21日 22時) (レス) id: 787493054e (このIDを非表示/違反報告)
太宰亜里沙(プロフ) - 素晴らしい作品です!出会えて幸せでした。最後涙が出てしまいました。感動をありがとうございます! (2019年5月21日 22時) (レス) id: 9865e50aa1 (このIDを非表示/違反報告)
星矢(プロフ) - g3r_hさん» えぇぇぇ!!めちゃくちゃ嬉しいです!!そんな、数少ない(であろう)コメントを貰えた上に惚れた、だなんて…めちゃくちゃ嬉しいです語彙力無いのが悔しいくらい嬉しいです…!ありがとうございます!頑張りますね! (2019年5月13日 22時) (レス) id: 787493054e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜透田 流 | 作成日時:2019年4月27日 20時