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十七日目 ページ19

こんなにも隙があると云うのに弾が飛んでこないと云うことは、きっとスナイパーも塵と化したのだろう。
そんな事を考えている間にも、私の体からは自身の血が絶えず流れ出ていた。





「…A、さん。」

『太宰くん…大丈夫?』





いつの間にか傍に来ていた太宰くんが、崩れ落ちた私をそっと抱き抱え、横にする。
私の肩を震える手で抱き寄せた彼の顔は、悔しそうに歪められ、頬を濡らしていた。





『もう、泣かないでよ…』

「ごめん、Aさん…私のせいで、私が、貴女を忘れたせいで…!」

『…太宰くんのせいじゃないよ。…私が、こうしたくてこうしたの…』






私が彼の頬の涙を優しく手で拭えば、彼は少し驚いたように目を見開き、懐かしむように頬を撫でる私の手に己の手を重ねた。
そして、「温かい…」と呟いた。





『ねぇ、太宰くん…』

「なぁに、Aさん。」

『…好きだよ。』






そのままの姿勢で、彼に想いを伝える。
きっと、これが最後だろうから。






『大好き。…あい、してる…』

「Aさん…私、は…」

『っ…ふふ…いいよ…分からなくて…』

「…好き、かは、分からないけれど…大切な人だったのだなってことは、分かるよ…」

『そう…ね、ぇ、太宰くん…』






段々と下がって行く体温。
思い通りに動かなくなる身体。
苦しくなる呼吸。

あぁ、死ぬって、こう云うことなんだ。

死を悟った私は、太宰くんに精一杯の笑顔を向けて、口を開く。





『…嘘で、いい、から…愛して、る、って…言っ、て…』






もう話すこともままならない私に、彼は、涙で顔を濡らしながらその言葉を紡いだ。






「…愛してる。」

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夜透田 流(プロフ) - 鏡の国のアリスさん» ひぇ…神作品だなんて…シリアス好きの衝動書きには勿体ないお言葉……ありがとうございます…!! (2019年10月27日 16時) (レス) id: 787493054e (このIDを非表示/違反報告)
鏡の国のアリス - 神作品に出会えた……!涙で滲んで画面が見えない事実ェ……(泣) (2019年10月27日 13時) (レス) id: 19bb89c399 (このIDを非表示/違反報告)
星矢(プロフ) - 太宰亜里沙さん» ありがとうございます!真逆、そこまで感動して下さるとは…作者も本作品も幸せ者ですね。最後まで読んでくださってありがとうございました!! (2019年5月21日 22時) (レス) id: 787493054e (このIDを非表示/違反報告)
太宰亜里沙(プロフ) - 素晴らしい作品です!出会えて幸せでした。最後涙が出てしまいました。感動をありがとうございます! (2019年5月21日 22時) (レス) id: 9865e50aa1 (このIDを非表示/違反報告)
星矢(プロフ) - g3r_hさん» えぇぇぇ!!めちゃくちゃ嬉しいです!!そんな、数少ない(であろう)コメントを貰えた上に惚れた、だなんて…めちゃくちゃ嬉しいです語彙力無いのが悔しいくらい嬉しいです…!ありがとうございます!頑張りますね! (2019年5月13日 22時) (レス) id: 787493054e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:夜透田 流 | 作成日時:2019年4月27日 20時

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