【MSSP】悪の兄弟【FB777】 (ページ12)

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Chapter.10：幾多ページ12

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ついに夜が来てしまった。

こんなにも、暗い空が憎いとは思わなかった。

黄色の国の幾多の家が焼き払われ、そこから逃げ出した国民達は、兵士達に殺され、幾多の命が消えていく。

苦しむ人々の嘆きは、FBには届かない。

周りの奴らは、パタリバタリと、倒れて行く。

そんな中、一人、森の中に姿を隠そうとする、国民を見つけた。

少し汚れているが、元々はとても綺麗な金髪の人だろう。

…その後ろ姿に、見覚えがあった。

「きっくん！」

「！？ …えおえおっ！」

顔には黒い炭みたいなのがくっ付いている。

でも、そんな事を気にしている暇は無い。

「きっくん… 落ち着いて聞いてね。
FBは…俺達の国の王は、きっくんをこの世から消そうとしてる。」

「えっ…！？嘘、でしょ？」

「嘘じゃない。このナイフで、きっくんを殺さなきゃいけないんだ。」

カタカタと震える手が、ナイフを握る。

きっくんの顔を見ると、困ったような笑顔を見せた。

「いいよ。」

「…はぁ？」

「良いよ、殺して。俺、えおえおと会えて、すっごい嬉しい。」

そう言って、バッと手を広げた。

殺さなきゃいけないのに。

ぽろぽろと、涙が止まらなくなる。

―――――ごめん、ごめんねきっくん。

ナイフを胸に構え、深呼吸をする。

―――――…やっぱ、無理だ。

カランと、地面にナイフを落とす。その姿を見て、驚いた顔をする。

「ど、どうしたの！？」

「無理… やっぱ、無理だよ！俺には、きっくんを殺す事なんて…」

そして、すぐ頭の中である場所を思い出す。

…あそこだ。あそこに行けば、誰も見つからない。

「きっくん、海の近くに家があるんだ。
そこは教会みたいな所なんだけど、誰も追いかけて来ない。そこに逃げて！」

「で、でも、えおえおは…！」

「王には、全員殺したって言っておく。きっくんは、どうにか生きてほしい。」

そう言って、トンッと背中を軽く押す。

その時の顔は、今すぐにも泣き出してしまいそうな顔だった。

―――――…ごめんね、きっくん。

―――――…またいつか、会おうね。

そう、心の中で呟いた。