青天の霹靂【 sh 】 (ページ10)

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「いらっしゃ、……え、」
「……１人です」
「……こちらへどうぞ」

私だと気づいてくれたようで一瞬表情が曇った。茶髪のストレート髪は黒く染められ、前髪は耳に掛けられ、一気に大人の雰囲気を醸し出す。黒いエプロンに黒いワイシャツ、やはり筋肉質な胸筋や二の腕が浮き出ていた。あのときと同じ背中を見つめて、席につく。

「ココア、ホットで」
「……かしこまりました」

数分で完成した温かいホットココア。湯気が立ち込める中、紫耀くんは何か言いたげにその場から動かなかった。チラッと見上げると逸らされた。

「卒業おめでとう」
「……ん、」
「元気にしてた？」
「……なんで？」
「……なんでって、急に会わなくなったから」
「会いたかったの？」
「そういうわけじゃ、」

分かりやすく不貞腐れたかと思えば、おもむろにLINEのQRコード画面を差し出され、読み取れと催促。「仕事中に携帯なんか怒られるよ」と言えば素直にしまって「ID教えてください」と。「ID許可してない」って言ったら「じゃあ番号教えて」と。「１１桁も覚えられるの？」なんて馬鹿にしたら「うざ」なんて返ってきて、我ながら不毛なやり取りが続く。

「なんなんだよ、やっぱそうじゃん」
「え？」
「俺のことなんかただの未成年としか思ってないんだろ」
「……なんで、そうなるの」
「興味なんかねえくせに」
「決めつけないで」
「じゃあなんであんとき聞いてこなかった？」
「………………」

＿＿「俺は１年のときから知ってるよ」

忘れるわけない。ふとした瞬間に、繰り返されるこの一言。聞きたかった。聞けなかった。怖かった。それを知ったら、何かが壊れそうで、踏み出せなかった。

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