鮮やかに【Atsuto.u】 (ページ32)

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「楽しかったあ！」

篤人「それは良かった。」

「篤人くん、ありがとね。」

篤人「いーえ。先シャワー浴びてきな。」

浦和駅近くのホテルを取ったが、急遽手配したので一部屋しか取れなかった。
Aはあまり気にしてないみたい。男に囲まれて育ったからかな…？

ちょっとは気にしてもらわないと、心配だけども。

「篤人くん先でいいよ！みんなからLINEがすごいから返信しちゃう！」

篤人「ん、わかった。」

くしゃっとAの髪に触れて、その場を離れる。嬉しそうに携帯を見るA。

来てよかったな、本当に。

…森脇くんに釘刺されたばっかりだから、浦和の誰にも一部屋だってことは言ってない。

ドイツの家だって、部屋は別々だ。この頃は一緒にいることも増えたが、俺もAもわりと部屋にこもることが多い。

心地の良い距離感。

パーっとシャワーを浴び、Aに早く風呂に入るよう促す。

あいつだってもうプロなんだから、身体冷やしちゃだめだし。

「篤人くん…タオルとってぇ…。」

風呂場からひょこっと顔だけ覗かせてこちらを見る。あ、タオル棚の中だったか…。

篤人「ん。風邪引くから早く拭いて出ておいで。」

「ありがと！」

恥ずかしそうに手だけ伸ばしてタオルを受け取る。そのとき、小さな隙間からAの背中が見えてしまった。

白く華奢な背中に、縦に真っ直ぐ大きな傷跡。

…事故の時のものか？

なんにせよ、Aが何も言わないなら、それは聞いてはならないもの。

薄い扉の向こうにAはいるのに、なんだか果てしなく遠くにいるような気がしてしまった。