鮮やかに【Atsuto.u】 (ページ25)

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槙野「雪谷コーチの車に乗ってたのは、Aと、陽介。奇跡的に陽介もAも無傷だったけん、でもAは目の前で親父さんが死ぬのを見とる。Aにとって浦和は悲しい思い出しかないんじゃ…。」

そう呟いた槙野くんの目には涙が浮かんでいた。

真司「…だからAはドイツに……？」

槙野「保険とか慰謝料でお金はあったけん、Aは東京の大学に行ったんよ。そこからは、俺は何も知らん。あとはお前らと出会って、って話し。」

大学のサークルでサッカーやってたって言ってたな。

練習してないやつの動きじゃない。

きっとAはずっと、サッカーしてたんだ。

きっと、たった1人で。

槙野「Aと関わるんだったら、怪我だけはしたらいけん。Aは怪我とか病気に過剰に反応するけん。…もし怪我しても絶対、復活して。」

怪我がつきもののサッカー選手という職業の俺たちには、無理な頼みだった。

それでも、俺は、

篤人「俺は、大丈夫。Aの前で壊れたりなんかしない。」

トラウマなんて、俺が拭ってやる。

槙野「頼もしいかぎりじゃなぁ…。」

槙野くんの表情は、本当に温かいものだった。

麻也「俺だって！怪我しない！」

真司「俺やて、せんわ。」

麻也が帰るのを見送ってから、真司も家に帰った。

槙野「うっちー、Aのこと頼むな。…ほんとは弱い子なんよ。」

篤人「大丈夫。」

槙野「うっちーの大丈夫は安心するなあ(笑)」

槙野くんは少し茶化したように笑ってから、家を後にした。

部屋のドアを開けて、ベッドサイドの椅子に腰掛ける。

少しだけAの髪に触れる。

…こんなにも、愛おしい。

もう俺は、怪我なんてしないよ。

壊れない。

だから、そばにいてよ。