鮮やかに【Atsuto.u】 (ページ22)

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何も話さないまま、時間だけが過ぎる。

「…篤人くんたち、心配してると思うから戻るね。」

立ち上がったAの手をとって、膝の上に座らせる。

「マキくん…？」

槙野「うっちーたちに、話したん？」

俯いたまま小さく首を横に振った。

槙野「いつかは話さんといけんことよ…。」

「…わかってるよ。」

くるっとAを反転させると目にいっぱい涙を溜めていた。

槙野「泣くなや。」

俺はもう、Aを慰めてやることはできん。

Aが望んで俺らから離れたんじゃ。

…Aの覚悟を踏みにじってまで、あの頃に戻る勇気は、ない。

槙野「泣くなや…。」

「泣いて、ない。」

上ずった声と、潤んだ瞳。

槙野「…みんな心配しとるけん、戻ろーや？」

コクリと頷いたAをそのまま抱き上げ、リビングへ戻った。

麻也「Aちゃん！」

真司「槙野くん、」

心底心配そうな麻也と、少し困った顔をした真司。

槙野「ごめん、思い出話多くって。うっちーは？」

真司「走り行ってくるゆーて、まだ帰ってきてへんよ。」

「私、迎えに行ってくる。」

ベンチコートを手にとって玄関に向かったAを麻也が制止させる。

麻也「多分、帰ってきたときにAちゃんいなかったら、うっちー寂しいと思う。待っててあげよ？」

真司「それにAは風呂上がりなんやし、風邪ひくで。ドイツの冬なめたらあかん。」

少し俯いたまま、リビングに戻ると、大きなソファーの1番端に座った。