106 辿り着いた先 ページ17
『あと少しかな…』
『そうだな。道はこっちで合ってる気がする』
潤くんは俺たちが帰りも迷わずに帰れるように、
自分たちが通った箇所に一定の間隔で赤色の紐を取り付けている。
俺は自分の荷物さえ持つ体力が残っておらず、荷物は翔さんの肩に。
そして自分の身はまーくんに引っ張られ、
なんとも情けない状況になっていた。
足が重たくて、前に進んでいるのかすらも不安になってくる。
「ねえ…ほんとに、ごめんね…」
『ん？今度は何に謝ってんだ？』
誰にも聞こえないくらいの声で言ったつもりだったけど、大野さんにはしっかりと聞こえていたみたい。
「俺、体力もないし、こうしてみんなに迷惑ばっかりかけてる」
『迷惑じゃねーよ』
「でも…」
『和はさ、俺が風邪を引いた時お粥を作ってくれただろ？』
「え？…うん」
『あん時、どんな気持ちだった？』
3ヶ月ほど前、大野さんの家に行ったらベッドの上で熱にうなされる大野さんを発見したことがあった。
あの時は幸い軽い風邪だったみたいで、
薬を飲ませてお粥を食べさせれば一晩すると熱は下がった。
弱ってる大野さんなんてほとんど見たことがなかったから
ベッドで横になる大野さんの横顔をずっと眺めているのもなんだか新鮮だった。
「どんな気持ちって…こんな俺でも大野さんの役に立てるんだって分かって、嬉しかったよ」
『一緒だよ』
「え？」
『俺らも一緒。和が困ってたり苦しんでたら助けたいし、助けることができるのって嬉しいことなんだよ』
そういうもんなの…？
『そういうもんだ』
俺の心の声を読み取ったかのように
大野さんはそう呟いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 433人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
櫻宮 - スピンオフ出たら速攻読みに来ます笑笑和は智たちは新たな道を歩いて行くのでしょう。和が言っていた｢僕を見つけて。｣きっとあの4人の心のどこかにあったんだと思います。 (2021年9月10日 9時) (
レス) id: 59853f2783 (このIDを非表示/違反報告)
Kai(プロフ) - 櫻宮さん» 櫻宮さん、さすがの解釈です...!!(拍手) 初めての長編で慣れていませんでしたが、最後まで読んでいただけて本当に嬉しかったです！スピンオフはまだ未定ですが、何かしら書くかもです！笑 また是非読みに来てください♪ (2021年8月15日 23時) (レス) id: 0d8f9465a1 (このIDを非表示/違反報告)
櫻宮 - きっと雅紀はあの子と何か関わりがあるのか調べるんだろうなぁと思いました。笑スピンオフ期待してます笑笑素敵なお話ありがとうございますm(_ _)m (2021年8月12日 17時) (レス) id: 59853f2783 (このIDを非表示/違反報告)
櫻宮 - このとき５人が探していたものは和は4人との思い出そして4人は和との思い出を探していたんだろうなと思います。最後のなんで泣いてるのか理由は簡単またあの4人に会えたから。凄く素敵なお話でした。 (2021年8月12日 17時) (レス) id: 59853f2783 (このIDを非表示/違反報告)
Kai(プロフ) - Akimiさん» Akimiさん、なんて嬉しいお言葉...(涙) 最後まで頑張って書いた甲斐があります。わざわざコメントまでしていただきとても嬉しいです♪ありがとうございます！ (2021年8月12日 15時) (レス) id: 0d8f9465a1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Kai | 作成日時：2021年5月17日 20時
