拾肆 ─── ページ15
翌日。
私はりゅーさんの部下の運転で、ポートマフィア本部へと向かっていた。
開けた窓から見える、重く立ち込めた雲が、暫くすれば大雨になるであろうことを物語っている。
「嫌な天気だな」
りゅーさんは憂鬱気にぽつりと呟くと、窓を閉めた。
「こういう時には悪い報せが入ることが多い」
悪い報せ、と聞いて、私の脳裏を猫の姿がよぎる。
あの青い手紙から全く音沙汰が無い『机上の黒猫』。
そんなに日は経っていないものの、あの手の組織は次の行動を起こすのが早いタイプだと思うのだが。
私は鞄からその例の手紙を取り出し、広げた。
「何かね?それは」
「ちょっと面倒事に巻き込まれちゃって。唯一の手がかりというか」
「ふむ」
貸せといわんばかりに、当たり前のように手袋を嵌めた手が此方に向かって伸ばされる。
「……『我ら『机上の黒猫』、貴殿に辛辣なる報復を行う事を忠告しておきます。貴殿から受けた傷、今も尚、癒えません。』……いやに丁寧で気持ち悪いな」
「そうでしょー」
半ば呆れてる様子のりゅーさんから手紙を受けとると、鞄に仕舞い直す。
「これ以降何も無くて。あ、いや、事件が起こっても困るんだけど」
「……私の方でも調べてみるとしよう。『机上の黒猫』だったか?裏組織についてはポートマフィアの方が詳しいだろう」
「ありがと。助かるわ」
笑みを交わしあった直後、車内に運転手のひきつった声が響いた。
「ひ……!く、車が……!」
何事かと前を見た時には、青塗りの外国車が正面から此方にぶつかるところだった。
あちこちの硝子が砕け、中に居る者など関係無しに、雨の様に車内に降り注ぐ。
シートベルトをしていなかったおかげで、私の体は前へ後ろへ叩きつけられた。
強い痛みが全身を襲う。
「……はっ!」
窓の外には追加の一台。
それは真っ直ぐ此方に向かって走ってくる。
「りゅーさん!」
打ち所が悪かったのか、既にぐったりしているりゅーさんが座っている辺りを目掛けて迷い無く走る車に怒りが湧いた。
しかし、助けに動こうとしても、打撲の痛みがそれを阻む。
「っ!」
そして、二度目の衝撃。
跳ね上がった身体は勢い良く車の天井へと向かい、私は頭を強く打った。
先程とは比べ物にならない痛みが、意識を段々と遠のかせる。
……太宰、さん……。
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椿 - 頑張って下さい。 (7月14日 6時) (レス) @page21 id: 12b579857a (このIDを非表示/違反報告)
まかろん - 更新楽しみにしてます!頑張って下さい! (2021年4月17日 23時) (レス) id: 0d4f326c6a (このIDを非表示/違反報告)
*深音*(プロフ) - 更新待ってます! (2020年2月24日 10時) (レス) id: 3a5cebd5e2 (このIDを非表示/違反報告)
ロット - 抱きたい症候群とは、小説の名前ですか? (2018年5月19日 15時) (レス) id: a63c890358 (このIDを非表示/違反報告)
蓮華(プロフ) - 更新待ってます (2017年5月21日 19時) (レス) id: b4564d59b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:久田 螺々亜 | 作成日時:2016年4月29日 12時