拾参 ─── ページ14
彼女からの電話は唐突だった。
「りゅーさん、泊めて……」
か細い声に、思わず了承していた。
「少し背が伸びたかね?」
お風呂から上がったばかりのAにホットココアを差し出す。
相変わらず豪快に髪を拭きながら、Aが礼を言う。
「もう二十歳過ぎてるのよ。伸びてる訳無いじゃない」
「組織から逃げて何年経ったかな」
「四、五年、ってことじゃない?」
もうそんなに年月が過ぎたかと、広津は目を細める。
親無しのAを拾って育てたのは広津だった。
部下達のように黒い世界に浸らせようとは思っておらず、ただ、この子が成長するのを見ていたいという、それだけだった。
まあ、森の目が鋭く、Aの異能を見つけられて、ポートマフィアに入れさせられたわけだが。
しかし、二人は親子ではないとはじめから知っていたせいか、親子の関係を越えた良好な関係を築いていた。
「早いものだな……」
「ふふ、りゅーさんも歳ね」
Aはホットココアを一口啜って、自らの足を抱くように丸まった。
「やっぱりまだ探してる?私のこと」
「それは勿論。君は私だけじゃなくて、ポートマフィア全体の娘なのだから」
「りゅーさんと私がまだ繋がってることは?」
「言ったら私の唯一の癒しが無くなるだろう?」
知らんふりで通してるさ。
さらりと広津はそう言い切ると、煙草を取り出した。
Aは身を乗り出すと、広津が持つ煙草を一本抜き取る。
「たまにはいいでしょ。火もください」
口にくわえ、まるでキスをするように広津の方を向く。
広津はそれに無言でライターを近づけてAの煙草に火を灯すと、直ぐに自分も煙草をくわえ、お互いの煙草の先を合わせた。
「……ちゅーや大きくなってる?」
「相変わらずだよ」
思わず吹き出して、吐き出された煙が目の前に広がった。
……会いたいなぁ。
「りゅーさん、明日マフィアの本部に連れてってって言ったら?」
言った瞬間、広津は物凄い形相でAへと向き直った。
「……本気かね?」
「え、待って、そんなに私ってお尋ね者?」
「……いや、別に私は構わないのだが。首領が帰してくれないと思ってな」
「多分紅葉姐さんも」
Aの言葉に広津は深く頷いた。
「数日なら大丈夫よ。一応言ってきたし。むしろストレス発散したい」
広津は暫く迷う素振りを見せていたが、漸く首を縦に振った。
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椿 - 頑張って下さい。 (7月14日 6時) (レス) @page21 id: 12b579857a (このIDを非表示/違反報告)
まかろん - 更新楽しみにしてます!頑張って下さい! (2021年4月17日 23時) (レス) id: 0d4f326c6a (このIDを非表示/違反報告)
*深音*(プロフ) - 更新待ってます! (2020年2月24日 10時) (レス) id: 3a5cebd5e2 (このIDを非表示/違反報告)
ロット - 抱きたい症候群とは、小説の名前ですか? (2018年5月19日 15時) (レス) id: a63c890358 (このIDを非表示/違反報告)
蓮華(プロフ) - 更新待ってます (2017年5月21日 19時) (レス) id: b4564d59b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:久田 螺々亜 | 作成日時:2016年4月29日 12時