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「一気に大勢の奴等と会って疲れただろう」
部屋に戻ると、国広がお茶を淹れて来てくれた
湯のみを触るととても暖かい
「あまり、俺達の前では声を出したくないか？」
悲しそうな声に顔を上げると、寂しげに揺れる瞳と視線がぶつかる
『違うんです…
私は、あなた達の言う主になれるのだろうかと不安で』
そう、ここの人はみんないい人
多分私に対する不満をあまり言わないと思う
でも、それが私は辛い
『だからこそ、記憶を失う前の私がどんな人だったのか知りたい』
お茶に映る自分の顔を見ると、やはり誰か別の人のように感じる
「あんたならそういうと思った」
優しい声音に顔を上げると、国広は私の部屋の中にある机から本を2冊取り出した
一つはとても分厚い、“審神者受継書”と書いてあった
もう一つは何も書いていない
「読んでみろ」
国広に促され、本…というかノートを開くと、懐かしく思う文字が私の目に入った
“4月1日
今日から私の審神者生活が始まる
私が最初に選んだ刀は〈山姥切国広〉
山姥切長義の写と言われる刀だけど、私はとても綺麗な刀だと思った”
“5月23日
この本丸にもたくさんの仲間が増えた
刀達の持つ物語を聞くと、早く関わりのある刀に会わせたいと思った”
“7月7日
今日は七夕、短冊に込める願いは、早く兄弟刀に会いたいとか、懐かしい人に会いたいとか
私も、気合を入れて運営しないとね”
これは、記憶を失う前の私の日記
この本丸ができた時から毎日ずっと綴られている
パラパラとページを捲っていき、最後のページになった
“3月15日
今日、私は政府に身柄を拘束されるんだろうな
でも、私はやっていない
濡れ衣を着せられるのはごめんだけど、この本丸が私にとって大切な場所だから
私はここを失うわけにはいかないんだ
審神者は居なくなれば後任が来る
でも、この本丸の代わりなんてどこにもいない
国広…”
過去の私に何があったんだろう
それを突き止めたい
私が私として生きるためにも
『国広、お願いがあります
私は自分が失った記憶を取り戻したい
一緒に探してくれますか？』
私の視線を受け、国広は視線を背けながらも返事を返してくれた
「ああ、分かった
あんたの命令だからな」
できるかできないかじゃない
やるしかないんだ
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作者名：夷空斗 | 作成日時：2019年1月20日 23時
