29 side山姥切国広 ページ29
久しぶりに見る本丸は相変わらずで、綺麗な門をくぐる
思ったよりも長い期間、本丸を離れてしまった
それだけ俺は自分という物語を考えることが出来た
過去にわたり、色々なものを見てきて思ったことがある
写だろうがなんだろうが、俺は俺だ
国広の傑作なんだ
そして、今は主であるAの刀だ
それだけで十分なんだ
＿＿＿＿
本丸の中へ入ると、空気が殺伐としている
何かあったのだろうか
みんなの気配がする広間へ向かうと、傷ついた三振りが目に止まった
「何があったんだ…」
思わず出た声に、皆の視線がこちらへ向いた
「兄弟…帰ってきたんだね…！」
兄弟である堀川国広が、俺のことを涙を流して見つめてきた
兄弟の様子もおかしいが、主の気配がない
皆はそのことを気づいているのだろうか
「兄弟、主はどうした？」
俺が問うと兄弟は下を向き、悔しそうに呟いた
「自ら政府の元に残り、僕達を逃がしてくれたんだ…！！」
「みんな…
俺達がいながら、本当に、ごめんな…！！」
太鼓鐘が畳を叩きつけた
何があったのか、未だに理解できない
兄弟の話だと、政府の元へ向かった事になる
「あるじさまをたすけにいきます！」
「その体では無理だ！」
今剣が岩融に抱えられている
「主を助けに行くものは出陣の準備を！」
「待ってください！
下手に動けばかえって主が危険になりかねます」
確かに、宗三の言う通りだな
下手に大人数で向かえば何があるかわからない
相手があの政府だからな
そしたらここは俺と本歌が適任だろう
「分かった、俺が迎えに行こう」
そういうと、皆が唖然とこちらを向いた
「山姥切、一緒に行ってくれるか？」
「もちろん、そのつもりだが？」
トントン拍子に話を進め、それぞれ準備をし、時空門へ向かった
「山姥切国広」
政府の元へ飛ぼうとした時、長谷部に呼び止められた
「なんだ？」
「お前達2人がこの本丸の柱だ
無事に主を連れて戻ってこい！」
いつにもなく真剣な顔の長谷部に俺は頷いた
長谷部の後ろには本丸の刀全振りがいた
そりゃそうなるよな
俺と本歌は時空転移装置にふれ、転移を開始した
もう、何を失わせやしない…！！
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作者名：夷空斗 | 作成日時：2019年1月20日 23時
