Aぇの紅一点神出鬼没のお姫さま (ページ46)

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京セラファンミ① ページ46

( you side )

正門「５人の口からご報告したいことがあります」

ツアーの発表をしたあとに正門が次の言葉を口にする。
デビューという言葉を井ノ原くんから聞いた時も嬉しかったけれど、それ以上に実感ができているのはどこを向いても見えるお客さんたちのおかげだ。
みんな、ありがとう。
やっとここまで来たよ。

すでに泣きそうなのをこらえていた。
メンバーがすっと息を吸う音が静かな京セラドームに響く。
こんなに会場が静かなのは生まれて初めてした体験かもしれない。

「「『僕らAぇ! groupは、CDデビューします！』」」

声を揃えて６人の言葉で口にすると、会場中から歓声が聞こえてくる。
金色の紙吹雪が落ちてくる中、円陣のようにメンバーと肩を組んだ。
全員の目が潤んでいて、絶えきれなくなって涙が落ちてくる。

『ありがとう……』

俯いて、マイクも通さずに口にした感謝はメンバーにはきちんと聞こえていたようで
「泣くなや」って泣きそうな小島に頭を撫でられる。

正直なことを言えば、しんどかった。
きっとこれは私だけじゃない。
誠也くんも、リチャくんも、
良規も、小島も、晶哉も。
楽しかったことも
ここにいたから出来た経験もたくさんある。
だけど同時に捨てたものもあったし、
出口の見えない道を進む恐怖だってあった。

あの日、
Ms.Princessが解散になって
一人ぼっちに戻って
もう諦めようと本気思った私を
たくさんの人が支えて引き上げてくれた。
良かった……、
諦めなくて本当に良かった……。

正門「僕たちの声でデビューを伝えることができて本当に幸せです」

少しだけいつもより震えた正門の声にまた泣きそうになる。

そのあとＣＤやＦＣの発足など
次々に情報を明かされていった。
その度に、思いっきり喜んでくれるのが伝わるファンの人たちの顔を忘れないようにと目に焼き付けた。

そして、きっとここにあるであろう彼と彼のファンの方の悔しさも受け止める。
私たちも同じだ。
ここに７人で、立ちたかった。
無かったことにはしない。
でも前を向くことが、私が彼にしてあげられる唯一のことな気がしていた。

情報解禁を終え、ライブに戻ろうとした時に会場のモニターが消えて見知った人達が映し出される。

『え？』

驚いているのは私だけじゃないようで、メンバーを見渡してみると全員が不思議そうな顔をしていた。
画面の中の彼らはそんな私たちを知るよしもなく「どうも、なにわ男子で～す」と明るい声をドームに響かせた。