十一話 ページ11
ある休日。
Aは、ベッドの上でただ呆然と天井を見ていた。
やることがない。やりたいこともない。
ならばどうするか。
…そうだ、街へ行こう。
どこかで聞いたことのあるフレーズに言葉を乗せ。
Aはベッドから勢いよく身を起こす。
与えられた部屋のクローゼットを開け、服を探すも目当ての物は見つからず。
パステルカラーの部屋着のまま、剥き出しの足で階段を駆け下りる。
「たしかここに…♪」
物置の中の衣装ケースを開け、心底楽しそうに服を選ぶ。
たまには男物を着ようかとも思ったが、やはりいつも通りがいい。
白と赤の服に身を包み、鞄を持って出発する。
「いってきまーす☆」
『いってらっしゃい』と返ってくる言葉はない。
何故なら両親は今朝早くに出かけたからだ。
Aは気にする様子もなく、家のある住宅街から街へと駆けて行った。
これがAの日常だ。
〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜
「♪〜♪〜」
デタラメな歌に声をのせ鼻歌を歌う。
これもまたAの日常だ。
そしてるんるんとスキップしている。うれしいことがあったわけではないが。
これもまたAの日常だ。
だから絡まれやすい。
「そこの女の子ー、俺らと遊ばない?」
「リュウ、またナンパですか…?」
「ちげーよ、お茶のお誘いだよ…あ」
それを俗にはナンパと言うのではないだろうか。
この街には軟派な者が多いのだろう。
今回で16回目だ。
「クッソー!また騙された!!」
「…お久しぶりですね、蔵王先輩♪」
そう16回目だ。
彼がAに騙されたのは。
「お知り合いですか?」
「はい、お知り合いですよ?鳴子先輩」
「コイツ、眉難高校の生徒だよ。生徒会補佐の…あぁ、制服着てたら分かったのに!」
生徒会補佐と言われてようやく理解したイオは感心した。
リュウが遠目から見て女の子と間違えるその容姿に。
「リュウが騙されるのは珍しいですね」
「近くまで来ないとコイツは男って分からないんだよ、小柄だし」
「ひどいですねー、蔵王先輩」
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薇(プロフ) - もっちり兎さん» 有り難うございます!これからも可愛く、面白く書けるよう努力します! (2017年4月2日 22時) (レス) id: c25bec0eb9 (このIDを非表示/違反報告)
もっちり兎(プロフ) - なんだか可愛いくて、おもしろいです!楽しみにしてます! (2017年3月20日 0時) (レス) id: e54c16753f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:薇 | 作成日時:2016年7月21日 2時