1月→2月 ページ7
hk said
ツアーの最終日、薮が泣いた。
ステージから降りて、慧は、ケラケラ笑って「大人は嬉しいと泣くもんな」って言ってたけど、俺的にはびっくりした。
東京に帰って来て、慧がお風呂に入っている時に「なんで泣いたの？」って聞いたら、真っ赤な顔して。
「嬉しかったんだよ。色々」
だって。
色々
か。
きっとこれから先も、嬉しくて泣いて寂しくて泣くんだろうな。
まじで、娘が可愛くて仕方がない父親だ。
そんな真っ赤な顔した父親もどきが慧と入れ違いで、風呂に入ったら、慧が小さい声で言って来た。
伊「ひか、内緒の買い物、行かない？」
八「そうだね。行こう」
もうすぐ、薮の誕生日。
ふへへって笑った慧の髪を乾かしてあげようと、ドライヤーを取りにお風呂に行ったら、薮がご機嫌に歌を歌ってるのが聞こえて来た。
誕生日も泣くな。こいつ。
年々、涙もろくなるのは年のせいなのか、なんなのか。
薮と同じ年なはずの慧は冷凍庫を開けて、アイスを物色してる。
八「小さいのだよ」
伊「・・・わあっ！しゃ、しゃりしゃりするの・・」
八「んー、ひかにちょっとくれるなら、いいよ」
伊「はーい」
にこにこしながらお目当てのしゃりしゃりするアイスを持つとソファーに座った慧の髪にドライヤーを当ててあげる。
ぶおーって音がして、慧の髪が流れる。
本人は気にしてるチャーミングポイントの広めなおでこが見えて、可愛い。
八「内緒の買い物のあと、ご飯たべて帰る？」
伊「家がいい。光のご飯」
八「ふはっ。はいはい」
家のご飯が良いって即答したのが嬉しくって、洗いたてで乾かしたてで、ふわふわしてる頭に鼻先をくっつける。
家のシャンプーの匂いがした。鼻先で頭をぐりぐりすれば、くすぐったいのか笑い出した慧が俺の方を振り向いた。
伊「くすぐったいよぉ」
八「ごめんごめん。慧が可愛かったから」
伊「ありがとう。可愛いは嬉しい」
なーんか視線を感じると思ったら、リビングの入り口で、薮がじっとこっちを見てる。
って、デレた顔して、目がうるうるしてる！
なんなんだ！お前！
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作者名：昨日 | 作成日時：2024年1月20日 9時
