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監督さんに怒られた。

「もっと元気いっぱいな笑顔で、元気にセリフ言ってみて」

って。

俺は「はい」って返事したけど、元気いっぱいな笑顔が出来なくて、出来ないと思うと、ますます出来なくなってしまった。

共演の女優さん達が、いっぱい話をしてくれてるのが申し訳なくて、ますます元気いっぱいな笑顔ができなくなる。

笑顔って、どうやるんだっけ。

訳が分からなくなって泣きたくなる。

「慧ちゃん。ご飯、食べよう」

控え室に戻ったら、今日、付き添ってくれてる裕翔が、光が作ってくれたお弁当を差し出した。

椅子に座って、うなずいたら裕翔がお弁当箱を広げた。

中「美味しそうだよ」
伊「・・・うん」
中「お腹、空いたでしょ。食べようよ」
伊「・・・俺、うまく出来ない」

ぽろりと涙が落ちてしまった。上手に出来ないのが悔しい。
昨日、山ちゃんと電話で話をして、山ちゃんが「好きだよ」って言ってくれた。

俺も山ちゃんを好きなのに、「好きだよ」って言えなかった。

山ちゃんの悲しい顔が頭に浮かんでしまって、もやもやして、ドラマの撮影に来ても、ますます、もやもやしてしまってる。

裕翔が俺の足元に跪いて、抱き締めてくれた。

大きな裕翔の手が背中や頭を撫でてくれて、ほっとなる。裕翔は弟なのに、大人みたいな大きな手が気持ち良い。

中「うまく出来ないって分かったのが偉いよ」
伊「・・・」
中「今は、ひー坊になりきって、いっぱいお弁当食べて、可愛く笑ってみよう。お腹いっぱいになったら心配事なんか、忘れちゃえるから。ね?」
伊「・・・うん、ありがと裕翔」

床から立ち上がった裕翔は俺の手を引っ張って、俺を立たせると、さっきまで俺が座ってた椅子に座った。

そんで、俺を裕翔のひざに座らせた。

伊「ゆーと?」
中「抱っこして、俺が食べさせてあげる!」
伊「いーよ!恥ずかしいよ!」
中「だめー!」

裕翔が俺のお腹に抱きついて離れない。

子どもじゃないんだから、ひざに抱っこされるなんて、恥ずかしいと抵抗したのに裕翔の馬鹿力にかなうはずがない。

ひざから降りる事を諦めたら、嬉しそうに裕翔が笑うから、なんだか俺もおかしくなって来て、笑ってしまう。

中「食べさせて、慧ちゃん」
伊「自分で食べろ!」
中「慧ちゃんを抱き締めてるから手が使えないの」
伊「まったく(笑)」

お弁当を食べたら、裕翔のひざで昼寝しよ。

☆→←☆



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作者名:昨日 | 作成日時:2024年1月20日 9時

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