成長痛を知らない君5(ymin)

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ym side

最近、慧ちゃんがツレない。

初めてのドラマの仕事のせいなのかと思って、知念が付き添う撮影の時は、お弁当を作って知念に持たせたけど、リアクションが無かった。

知念が送ってくれたお弁当を食べてる写真の慧ちゃんは、嬉しそうな顔してたけど。

お弁当箱を返して来た知念が「慧ちゃんは涼介と友達になりたいんだって」って言った。

普通に考えたら恋人に「友達になりたい」って言われたら、別れの言葉だけど。

「友達に戻りたい」じゃなくって「友達になりたい」って言った慧ちゃんの本心はなんだろう。

って、考えてたらメッセージが来た。

『家に招待してやる』

薮ちゃんからの果たし状だ。
いや、呼び出し説教ミーティングかな。
なぐさめてくれるとは思えない。

指定された日時は慧ちゃんのドラマ撮影日。
慧ちゃんがいない所に招待って事は、説教ミーティングだ。

『慧には内緒。夕ごはんには帰って来るから、みんなでご飯、
食べよう』

光くんからのフォローがありがたい。

『行きます。よろしくお願いします』ってメッセージを送って、スマホを閉じる。

指にはめてるビーズのリングをそっと撫でたら、慧ちゃんがアタマを撫でられた時に見せる、ちょっと恥ずかしいけど嬉しそうにはにかむ顔が頭の浮かぶ。

恋の駆け引きなんかできないし、そんな言葉すら知らないだろう慧ちゃん。

我慢できなくなって慧ちゃんに電話する。
しばらく呼び出し音がなって、出てくれないかなとドキドキしてたら、慧ちゃんの声が聞こえて来た。

伊「こんばんは」
山「こんばんは」
伊「どうしたの？」
山「慧の声が聞きたくなったし、慧に好きって最近、言えてないなって思って」
伊「ふーん」

元気がない声な慧ちゃん。
心配になるけど、慧ちゃんを悩ませてるのが自分だと思うと、ちょっとだけ、きゅんってなる。

山「慧の声が聞けて嬉しい」
伊「・・・俺も涼介の声が聞けて嬉しいよ」
山「本当は顔が見たい。会って抱き締めてキスしたい」
伊「・・・うん」

慧と俺は恋人。
友達にはなれないよ。

そんな事を言ったら、泣いちゃうんだろうなと思ったから、「好きだよ」って伝えて電話を切った。

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