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Toothbrush|44 ページ45






『ごめんね...。邪魔にならなそうな時に電話掛けるって言ったのに__その、仕事とか』


「仕事の事は気にしなくていい。一度休みを取るように言われてたんだ」



ゆったりとした口調で、近場の自販機で買ってきたのであろう缶のミルクティーを手渡され、冷えた指先に熱伝導でじんわりと温かさが馴染んだ



身を切る寒さにかじかんだ両手でカイロ代わりに缶を包む





「...あ、日暈」


『え?』


「空見て」



彼の催促に同様にして青空を見上げれば太陽に光の輪が出来ていた




「中々見れない大気光現象なんだ。日暈が出来ると低気圧接近で天気が崩れるとも言うが...綺麗な事に変わりない」


『__そうね』




直射日光は目に悪いがものの数秒なら問題無いだろう。神秘を前にじっと目を凝らす




「巻層雲の中の氷晶が頂点60°でプリズムが発生し、太陽を中心とした視半径22°を目処に曲線を描くんだ



__ほら、その証拠に外側にいくにつれて暗くなるだろ?」



『ほんとだ』



「これを22°ハロと言うんだ」




流石は首席。スラスラ出る博識に最早ついては行けぬ




「ハロと言えば、僕の家でも子犬を飼っているんだ。それこそハロって名で...由来は違うけれど」



『降谷子犬飼ってるの?何だか意外』



「そう見えるか?」



『とっても』



クスリと笑って見せれば、彼の特徴的な青い瞳も細められた





__彼の、残酷で、慈悲なまでの優しさが、気になっているであろう核心には触れてこない




彼への甘えと自分の弱さに項垂れる





『...ね、降谷。__何も聞かないの?』




急に呼び出しておいて会うなり泣き出したのだ。それでも理由を話さない私に痺れを切らさなかっただろうか




「__話せないならそれでいい。遠慮して話さなきゃいけない間柄でもないだろう?」



シンプルでいて奥深くに反芻する彼の答えに、景色を成形するジオラマに視線を預けた





『...私ね。__松田の事が好きだったの』



「...うん」



『もう3年経つのにね。未だ昨日の事のように思い出せる』




自嘲気味に嘲ってもただただ虚しい。心はどうやっても満たされない





__3年前、戻ってこいと言った松田の元へは戻らなかった




そして告げる事もなかった別れが突然にして訪れたのだ






__そうか、3年前のあの日と今この瞬間




全く同じ状況下の置かれているのだ。私を試そうとあの日が巡ってきたように





__こうやってまた、私は後悔するのよ

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設定タグ:名探偵コナン , 松田陣平   
作品ジャンル:恋愛
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ふぐひらめ(プロフ) - 自分の目が土偶のように腫れあがってしまいました。松田も西城ちゃんも悪くないんだよなぁ、でも報われねぇんだよなぁ…。もし余裕が出来ましたら、この二人の普通にイチャコラしてる話が読みたいです!生前の、になるのか別世界パロになるのかはお任せします。 (10月9日 11時) (レス) @page50 id: 63e1c883be (このIDを非表示/違反報告)
輪廻(プロフ) - 大変面白く、続きが気になってしまって一日で読破してしまいました…何処を探しても、こんなに泣いて考えさせられた小説はありません…!素晴らしい作品を、本当に有難う御座います! (9月30日 9時) (レス) @page50 id: 6cfce3c49c (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 何度見ても涙が止まらないです。本当に、なんで死んでしまったのでしょうかね (5月7日 14時) (レス) id: 86ac079c04 (このIDを非表示/違反報告)
kaki - こんばんは。何度も何度も読んでも涙が止まらないです、、涙が枯れるかと心配になるほど、出てきます。素敵なお話をありがとうございました。 (5月6日 23時) (レス) id: 9254c6c927 (このIDを非表示/違反報告)
ミートボール(プロフ) - こんばんは。初めて小説を読んで声が出るくらい泣きました。とても読み応えがあって、「何度でも読みたい」と思う物語でした、、!たくさん小説がある中でこの小説に出会えて本当に良かったと思いました。素敵な作品を描いてくださって本当にありがとうございました。 (2023年3月21日 0時) (レス) @page50 id: abe3749231 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リンドウ | 作成日時:2019年8月12日 2時

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