Toothbrush|38 ページ39
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時計台の真下に立ち竦む松田に、『待たせた』と声をかけて近付く
「お、結構早かったな」
『それなりにね』
暗めのアウターに真っ白なハイネックセーターを着こなす彼はいつもに増してお洒落で格好いい
家を出る際私はメイクの最中で、松田は玄関先から先行っとくと伝えていたため同じ家に居るにも関わらず現地集合だったのだ
「......」
ふわりと浮いた前髪を手直ししていると、松田からの上から下まで眺める視線に身構えた
『何よジロジロ見て』
「...馬子にも衣装」
『どつきまわすぞ』
「冗談だよ」
ケラケラ愉快そうに何故か安心したかの如く笑う松田と私の通常運転のやり取り
「__うん。綺麗だよ」
一拍おいて途端にこの上無い微笑を称えてそう口にする彼は完全に殺しにかかってる。やめろ、惚れるだろ
『そっ、そう言えば何で現地集合?一緒に家出るんじゃ駄目だったの?』
「こういうのは待ち合わせから始まる醍醐味だろ?デートなんだから」
『...これデートなの?』
「デートだろ?」
『...そう』
不自然に逸らした顔は沸騰する勢いで。冬の寒風が幾分か丁度いい
これから一生__並ぶ事も無いだろうと思っていた彼の隣に立てるのは、心地よい違和感でもあった
**
「俺、ホラー」
『絶対スプラッタ』
上映時間まで残り僅か
二つのポスターを目の前に男女二人がデート開始早くも攻防戦を繰り広げていた
「おいおい冗談だろ、スプラッタ?昼飯前に??単純にホラーヒビってんだろ?」
『そんな事無いですぅー。松田こそホラーなんてド定番持ってきて本当はスプラッタ苦手なんじゃないの?』
「お前の職業柄スプラッタ好きなんて言われるとある意味狂気だわ」
溜め息をついて腕時計に目をやる彼は腹を括った面持ちで別のポスターを指差した
「分かった。じゃあ間を取ってあれにするぞ」
指先を追って視界に映るのは。__子犬と子供の成長日記というもので
何 処 が 間 取 っ て ん だ よ
私らみたいな奴が柄にも無く見る映画じゃねぇだろと反論したものの、自分でもこのままでは埒が明かない事に気付いていたので渋々チケットを購入したのだった
後に上映終了後、
『__感動のワンコロ系は駄目だろ...』
「全米が泣いた」
手で顔を覆いながら大号泣で館内を出た
大満足だわ
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ふぐひらめ(プロフ) - 自分の目が土偶のように腫れあがってしまいました。松田も西城ちゃんも悪くないんだよなぁ、でも報われねぇんだよなぁ…。もし余裕が出来ましたら、この二人の普通にイチャコラしてる話が読みたいです!生前の、になるのか別世界パロになるのかはお任せします。 (10月9日 11時) (レス) @page50 id: 63e1c883be (このIDを非表示/違反報告)
輪廻(プロフ) - 大変面白く、続きが気になってしまって一日で読破してしまいました…何処を探しても、こんなに泣いて考えさせられた小説はありません…!素晴らしい作品を、本当に有難う御座います! (9月30日 9時) (レス) @page50 id: 6cfce3c49c (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 何度見ても涙が止まらないです。本当に、なんで死んでしまったのでしょうかね (2023年5月7日 14時) (レス) id: 86ac079c04 (このIDを非表示/違反報告)
kaki - こんばんは。何度も何度も読んでも涙が止まらないです、、涙が枯れるかと心配になるほど、出てきます。素敵なお話をありがとうございました。 (2023年5月6日 23時) (レス) id: 9254c6c927 (このIDを非表示/違反報告)
ミートボール(プロフ) - こんばんは。初めて小説を読んで声が出るくらい泣きました。とても読み応えがあって、「何度でも読みたい」と思う物語でした、、!たくさん小説がある中でこの小説に出会えて本当に良かったと思いました。素敵な作品を描いてくださって本当にありがとうございました。 (2023年3月21日 0時) (レス) @page50 id: abe3749231 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リンドウ | 作成日時:2019年8月12日 2時