Toothbrush|31 ページ32
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『...お盆以来ね__萩原』
__萩原家と彫られた墓石を前に佇んだ
松田は煙草を吸い始める
長い事来れなかったが添えられた花やお酒は比較的新しい。親族が替えたのだろう
そこに買ってきた花を一輪一輪挿していく形になる
線香に火を点け供えて手を合わせれば、松田も同様に線香と自分の吸っていた煙草を供え手を合わせていた
静かに瞳を閉じる彼の横顔は何処か憂いげでいて...顔の良さ故かその美しい佇まいから視線をゆっくり外して自分も目を閉じた
瞳を上げ『また来るわね』と返ってくる筈も無い彼に告げて、今度は松田に告げた
『3年ぶりの再開でしょ。まだゆっくりでいいから私は車で待っとく』
ひらりと手を振り階段へ足を掛ければ背後から『ありがとう』と柔らかな感謝の言葉が飛んできた
そんなテノールの声を心地よく感じながら晴れた空を見上げるのだ
**
次に景光、伊達とそれぞれ違う場所に住む彼らのお墓を巡り、彼等との思い出を口にしながら伊達の墓石を前に口をつぐむ
__助手席にある一束が、この後どうするのかと私を責める
「なぁA」
『...何?』
当たり障り無いよう紡ぐが彼のこれから言うであろう、予想出来る言葉を聞きたく無いのも現実
だが彼はやはり言ってのけるのだ
「__俺の墓に連れて行ってくれないか」
『...絶対に嫌』
4つ花束がある時点で気付いていたのかもしれない。萩原と景光、伊達、それと松田の分なのだから
「頼む。どうしても駄目か?」
『っ、なんで。絶対言うと思ったから連れて行けないって行ったのよ。アンタがいる前で参れとでも言うの?』
絶対に折れたくない
そう思うのに
__揺れる彼の瞳から逃げられずにいる私も私で
『...ほんっとう、悪趣味』
何が良くて自分の墓に行きたがるのだろうかと心底理解出来ずにもやっぱり彼を乗せて彼の墓へ向かうのだ
**
鼻孔を掠める香典
花を添えるべき人物が隣にいる最中、私は冷たい墓石へと手を合わせる
「お前は、いつもこうやって参りに来てたんだな」
何処か嬉しそうに笑う松田に不謹慎だと頭をはたく
『そう言えば消えてない線香があるわね。松田の親族か...美和子か高木君が来たのかしら__』
「__A?」
砂利を踏む音
松田とは違う低音に、声のした方へ振り返って目を見開いた
『__降谷...?』
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ふぐひらめ(プロフ) - 自分の目が土偶のように腫れあがってしまいました。松田も西城ちゃんも悪くないんだよなぁ、でも報われねぇんだよなぁ…。もし余裕が出来ましたら、この二人の普通にイチャコラしてる話が読みたいです!生前の、になるのか別世界パロになるのかはお任せします。 (10月9日 11時) (レス) @page50 id: 63e1c883be (このIDを非表示/違反報告)
輪廻(プロフ) - 大変面白く、続きが気になってしまって一日で読破してしまいました…何処を探しても、こんなに泣いて考えさせられた小説はありません…!素晴らしい作品を、本当に有難う御座います! (9月30日 9時) (レス) @page50 id: 6cfce3c49c (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 何度見ても涙が止まらないです。本当に、なんで死んでしまったのでしょうかね (2023年5月7日 14時) (レス) id: 86ac079c04 (このIDを非表示/違反報告)
kaki - こんばんは。何度も何度も読んでも涙が止まらないです、、涙が枯れるかと心配になるほど、出てきます。素敵なお話をありがとうございました。 (2023年5月6日 23時) (レス) id: 9254c6c927 (このIDを非表示/違反報告)
ミートボール(プロフ) - こんばんは。初めて小説を読んで声が出るくらい泣きました。とても読み応えがあって、「何度でも読みたい」と思う物語でした、、!たくさん小説がある中でこの小説に出会えて本当に良かったと思いました。素敵な作品を描いてくださって本当にありがとうございました。 (2023年3月21日 0時) (レス) @page50 id: abe3749231 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リンドウ | 作成日時:2019年8月12日 2時