Toothbrush|1 ページ1
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『もういい、松田と別れる』
「はっ?」
きっかけなんて覚えて無い
今思えば些細な事だったと思う
それでも怒りを露にしたまま半同棲状態の松田の部屋から自分の荷物を纏め夜中にも関わらず今尚ネオンの光る野外へ飛び出した
「おいっ、A!!」
玄関先から彼が叫んでいた...気がしなくも無いが、振り向きなんて事もせず無慈悲ながら自宅に戻って突っ伏した
そして松田の家を出て、一方的に別れを告げてから数週間後の事だった
「今日から捜査一課に配属となった松田陣平君だ。彼は去年まで警備部機動隊に所属していた変わり種でな...」
「よしましょうや警部さん...」
朝の朝礼と共に行われた突然の人事異動挨拶
__はぁ?はぁ!??はぁ!!??
ここ警視庁刑事部捜査一課強行犯三係所属の私は佐藤美和子の一個先輩
なのに何でアイツがここに...と口をぱくぱくさせていれば見かねた美和子が耳元に口を寄せて来た
「何だか彼、特殊犯係に転属を希望してたみたいだけど、頭を冷やせってここ捜査一課に配属されたとの噂よ。
...A、もしかして彼と知り合い?」
知り合いも何も。ついこの間まで付き合ってました、なんて口が裂けても言えない
因みに美和子とは古い頃からの知り合いなので敬語は無し。フランクでいいのだ
『し、知らない』
その場凌ぎの苦しい嘘を告げて私達は関係上、元彼、元彼女でも、知り合いでも無い、“見知らぬ他人”として過ごす筈だった
__のに。
「おい、歯ブラシ忘れてんぞ。」
異動初日。私のデスクにズカズカやって来ては私の目を覗き込みながら松田が放った
『__っ、はぁ??』
「えっ、ちょっ、A。さっき知らないって」
隣のデスクに居る美和子が何かを言っているが、最早耳には入ってこず
__何、それ。出て行くならくまなく私物持って帰れって?
言われなくてもそうするわよ!!
『そんなものそっちで捨てといてよ』
ぶっきらぼうに、視線を交えずに冷徹に告げた言葉に松田が腕を掴んできた
「〜〜、だからそうじゃねぇよ!!帰ってこいつってんだ!!!」
松田のカミングアウトで私達の関係性は捜査一課内へ秒単位にして広まった
__だけどそう言って、帰る場所を作ってくれたアンタは
...もうここには居ないじゃないの
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ふぐひらめ(プロフ) - 自分の目が土偶のように腫れあがってしまいました。松田も西城ちゃんも悪くないんだよなぁ、でも報われねぇんだよなぁ…。もし余裕が出来ましたら、この二人の普通にイチャコラしてる話が読みたいです!生前の、になるのか別世界パロになるのかはお任せします。 (10月9日 11時) (レス) @page50 id: 63e1c883be (このIDを非表示/違反報告)
輪廻(プロフ) - 大変面白く、続きが気になってしまって一日で読破してしまいました…何処を探しても、こんなに泣いて考えさせられた小説はありません…!素晴らしい作品を、本当に有難う御座います! (9月30日 9時) (レス) @page50 id: 6cfce3c49c (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 何度見ても涙が止まらないです。本当に、なんで死んでしまったのでしょうかね (2023年5月7日 14時) (レス) id: 86ac079c04 (このIDを非表示/違反報告)
kaki - こんばんは。何度も何度も読んでも涙が止まらないです、、涙が枯れるかと心配になるほど、出てきます。素敵なお話をありがとうございました。 (2023年5月6日 23時) (レス) id: 9254c6c927 (このIDを非表示/違反報告)
ミートボール(プロフ) - こんばんは。初めて小説を読んで声が出るくらい泣きました。とても読み応えがあって、「何度でも読みたい」と思う物語でした、、!たくさん小説がある中でこの小説に出会えて本当に良かったと思いました。素敵な作品を描いてくださって本当にありがとうございました。 (2023年3月21日 0時) (レス) @page50 id: abe3749231 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リンドウ | 作成日時:2019年8月12日 2時