Toothbrush|33 ページ34
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松田が居なくなった途端口を閉じた私
久しぶりの再開もあってか、二人になると余計な緊張に包まれる
__降谷には、最初から私一人しか見えていないだろうが
『...こうも久しいと何から話していいか分からないわね』
「ふふ、そうだな」
ありがちな切り出し方の模範的言葉にも彼は同調し、小さく笑う降谷にやっぱり変わってないな、と懐かしさを噛み締めつつ鞄のショルダーを握る
『まぁでも。__久しぶりって言っても本当ここ最近、2年前の話よね』
そう、降谷は2年前に私と伊達に会いに来たのだ
ーー
『伊達!急に呼び出してどうしたの?』
前を行く伊達の後ろをついて行きながら、その内容について問いた
すると大柄な彼は、いつもの堂々とした立ち姿はそこに無く、不安と喜びで震えた声色からは頼りなく見えた
「...降谷が俺らに会いに来てるんだ」
__警察学校卒業以来だった
それから何処の部署に配属されたのかも知らない景光と降谷だけは連絡が一切つかなかったのだが
__どうやらそれは。感動の再開と呼ぶには程遠いものだったらしい
『嘘、本当に降谷...?卒業以来じゃないの』
早速彼が指定した場所に二人揃って足を運べば、壁に背を付け空を見つめる降谷の姿
私達が当時27歳の話だ
「降谷!久しぶりだなぁ!!」
真っ先に駆け寄る伊達に気付いた彼は目尻を下げ、私達の姿を視界に入れると何処か不安げに表情を崩した
降谷の再開と感情の表現がいまいち一致せず、異変に俊敏だったのは伊達も同じだったようで
__彼の瞳に光など差していなかった
「...ヒロが__死んだんだ」
心臓を鷲掴みされた感覚
喉の奥がヒュッと鳴る
茫然としたままの伊達と私を置いて、まるでそれだけを言いに来たのだと言いたげに彼は黙ってその場から姿を消した
そして、二度目の再開は今現在の墓場での事なのだ
ーー
『その後凄い心配して探し回ったんだから。結局見つからなくて今に至っているのだけれどね』
「あの時はすまなかった。...自分でも相当参ってたんだ」
乾いた笑いを溢す降谷は、似合わない下手な笑みを作る
『__翌年に、伊達が殉職したのよね』
伊達を思い出して、『ナタリーさんとの結婚式行きたかったな』と譫言の様に呟いた
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ふぐひらめ(プロフ) - 自分の目が土偶のように腫れあがってしまいました。松田も西城ちゃんも悪くないんだよなぁ、でも報われねぇんだよなぁ…。もし余裕が出来ましたら、この二人の普通にイチャコラしてる話が読みたいです!生前の、になるのか別世界パロになるのかはお任せします。 (10月9日 11時) (レス) @page50 id: 63e1c883be (このIDを非表示/違反報告)
輪廻(プロフ) - 大変面白く、続きが気になってしまって一日で読破してしまいました…何処を探しても、こんなに泣いて考えさせられた小説はありません…!素晴らしい作品を、本当に有難う御座います! (9月30日 9時) (レス) @page50 id: 6cfce3c49c (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 何度見ても涙が止まらないです。本当に、なんで死んでしまったのでしょうかね (2023年5月7日 14時) (レス) id: 86ac079c04 (このIDを非表示/違反報告)
kaki - こんばんは。何度も何度も読んでも涙が止まらないです、、涙が枯れるかと心配になるほど、出てきます。素敵なお話をありがとうございました。 (2023年5月6日 23時) (レス) id: 9254c6c927 (このIDを非表示/違反報告)
ミートボール(プロフ) - こんばんは。初めて小説を読んで声が出るくらい泣きました。とても読み応えがあって、「何度でも読みたい」と思う物語でした、、!たくさん小説がある中でこの小説に出会えて本当に良かったと思いました。素敵な作品を描いてくださって本当にありがとうございました。 (2023年3月21日 0時) (レス) @page50 id: abe3749231 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リンドウ | 作成日時:2019年8月12日 2時