おい、歯ブラシ忘れてんぞ。【松田陣平】

Toothbrush｜２１ ページ22

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『まさかブービートラップじゃなくて導線を全部断つ事でスイッチが切れる爆弾だったなんて』



あの時限爆弾は一本でも導線回路を残そうものなら最終的に起爆する仕組み


あのままどうなってたかと思うとぞっとする






『＿＿無事で良かった』



人質に取られた子供は解放され、無事親元へと戻った



両親と子の抱擁を遠い場所で一人、＿＿厳密には二人で、見ていた



「おつかれ」


『どーも』




さりげなく隣に並んだ松田は私と同じ景色を見ていた





『...犯人達、地下の抜け道から逃亡しようとしてたところを捕らえたって。美和子が言ってた』


「ま、鍵落としてくぐらい間抜けだからな。逃げた先にサツがいる事も想定外だったんだろーよ」



暢気にケラケラ笑う声は真っ青な冬の空に吸い込まれる






その笑い声は




私以外聴こえない






少し目を伏せ息をついた私に松田は口を開いた




「何かさ、檻状で区切られてても幽霊だし通り抜け可能だと思うだろ？普通に全然無理だった」


『アンタ本当は生きてんじゃないの』


「俺もそう思う」




今度こそ体内に溜まった息を盛大に吐き出した




『私は。その事は何とも思ってない



＿＿松田、本当はあの爆弾がどんなタイプのものなのか知ってたでしょ』




悩みという悩みの種では無いが、その類いでいくなら“松田なら不安に煽られず直ぐ様解除可能だった”という点で






＿＿別に、知ってて教えてくれなかったりヒントを与えてくれなかった事を根に持っているのではない




経験と知識の差もある





だからこそ、だ。私があれだけ悩み考えて成功した結果が今生きてる事で。



松田は序の口程度の物だったのだろうと思うとやはり敵わない悔しさがこみ上げるだけだ





『...でもね、松田』



ハードボイルドなくせに


人一倍熱くて思いやりがあって


なのに私に合わせた視線は何処か優しくて







『松田が来てくれて良かった。〜〜あっ、ありがと』




感謝なんて言い慣れて無いからしどろもどろで言葉を繋ぐ


顔は見ずとも真っ赤であろう





そんな私に松田は目を見開いて片手で顔を覆った





「おっまえ...夜覚えとけよ。ぜってぇ襲う」


『ふざけんな署に連行だ変態』

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