Toothbrush|18 ページ19
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子供の首からぶら下がる爆弾を取って地面に置く
鍵を掛けられた金庫内は真っ暗。減り続けるタイマーの赤い数字とスマホでかざす明かりだけが見える光だ
『(手探りでスイッチを探しても無い...外に設置されてるのか)』
時限爆弾の表面を外し導線回路を開く
スマホの光を当てればこめかみに汗が滲み出た
『(時限爆弾の自作は至って簡易な構造、なのに何この回線の複雑さと多さは)』
爆弾解体なんて警察学校でかじった以来。それに当時はここまで難題じゃなかった
一気に駆け巡る不安
喪失していく自信
__しかし
子供の目線へしゃがみ肩に手をおいた
『...絶対に大丈夫。無事両親の元へ帰るのよ』
一人じゃないのだ。ここには子供がいる。失敗してなるものか
『力を貸してね、松田』
危機的状況に立たされても、彼の名を口にすれば不思議と絶対的安心があった
**
『(...残り、2分)』
手元に集中して浅くなる呼吸
スマホを固定する左手に痺れを伴う
所々に切れた残骸のコード
しかしながらまだ5本残っている。威力だって計り知れないのだ
5分の1の確率を引いてしまわないよう設計から考えて切っていくには2分は足りない様に感じた
変な汗が出るせいで首に張り付いた長い髪を後ろで一つに括る
充血する眼を何度も瞬きして目頭を押さえた
『...っふ、ぅ...落ち着け』
落ち着け、落ち着けと自己暗示をかけるものの間に合わないかもと負の考えが脳内を占めていく
もし、この子が無事外に出ていたら
__ここまで解体に向き合っていただろうか
私一人の命ならって、心の何処かで
諦めはついていた
『(松田はあの時、)』
どんな気持ちで解体に臨んだの
松田も大勢の民間人のためならって、自分の命は投げうって__
『...ああもう!!!』
思いっきり自分の頬をひっぱたいてやった
バカか私!!
松田はあの時諦めてなど無かった
私なんかと同等にするな
再び工具を握り絞める
大声挙げてごめんね、と子供に向き直ったその瞬間だった
ガチャガチャと雑に鍵を回す音
数回後にしっかり嵌まったのか重い扉がギイィィと相応の重音を立てて光が差した
__どうして、絶体絶命のピンチに。これ以上の格好いい事してどうすんのよ、
「A!!」
『__松田!!』
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ふぐひらめ(プロフ) - 自分の目が土偶のように腫れあがってしまいました。松田も西城ちゃんも悪くないんだよなぁ、でも報われねぇんだよなぁ…。もし余裕が出来ましたら、この二人の普通にイチャコラしてる話が読みたいです!生前の、になるのか別世界パロになるのかはお任せします。 (10月9日 11時) (レス) @page50 id: 63e1c883be (このIDを非表示/違反報告)
輪廻(プロフ) - 大変面白く、続きが気になってしまって一日で読破してしまいました…何処を探しても、こんなに泣いて考えさせられた小説はありません…!素晴らしい作品を、本当に有難う御座います! (9月30日 9時) (レス) @page50 id: 6cfce3c49c (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - 何度見ても涙が止まらないです。本当に、なんで死んでしまったのでしょうかね (5月7日 14時) (レス) id: 86ac079c04 (このIDを非表示/違反報告)
kaki - こんばんは。何度も何度も読んでも涙が止まらないです、、涙が枯れるかと心配になるほど、出てきます。素敵なお話をありがとうございました。 (5月6日 23時) (レス) id: 9254c6c927 (このIDを非表示/違反報告)
ミートボール(プロフ) - こんばんは。初めて小説を読んで声が出るくらい泣きました。とても読み応えがあって、「何度でも読みたい」と思う物語でした、、!たくさん小説がある中でこの小説に出会えて本当に良かったと思いました。素敵な作品を描いてくださって本当にありがとうございました。 (2023年3月21日 0時) (レス) @page50 id: abe3749231 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リンドウ | 作成日時:2019年8月12日 2時