ノート1冊につき、塩キャラメル1粒〜夏休み〜【国見英】

○集合 ページ4

7月22日 午前6時45分 青葉城西高校正門

「A忘れ物ない？」

「大丈夫」

親友に確認され、即答する。
昨日念入りに確認したから大丈夫だ。

正門を通ると、大きなバスと大勢のバレー部員が見える。
内心ビクビクするが、どうやら親友も同じらしい。
互いに緊張する姿を見て、少し落ち着いた。
この合宿に親友も参加することは僥倖だった。

入畑先生のもとへ行き、挨拶をする。
申し込みの際に学生証のコピーと鮮明な証明写真も提出しているので、その確認だ。

「2人もありがとう。仕事は現地に着いたら私や溝口コーチが指示するから、今は部員や他のマネージャーと親睦を深めてください」

挨拶を終え、あちらに先に来ている臨時マネージャーがいるよ、と促された。
入畑先生の指す方向には、動きやすそうな格好の3人の女子生徒。
下は学校指定のジャージを穿いている。
2年生が1人、3年生が2人だ。

「あの、先輩方と同じく臨時マネージャーをやります！1年のAAです！よろしくお願いします！」

自己紹介をし、30度のお辞儀する。
親友もそれに倣った。

「1年生？よろしくね〜」

「そんなに改まらなくていいよ！」

「一緒に頑張ろーね！」

温かい挨拶をもらい、安心した。
聞けば、先輩たちもマネージャー経験はあまりないらしい。
運動部だった先輩は2人で、マネージャー経験があるのはそのうち1人だ。
お互い頑張ろう、と言われ気合を入れた。


・


点呼が終わり、部員の前で紹介された。
大柄の男子たちが一斉にこちらを見るのは威圧感がある。
しかし、皆真剣だ。
絶対に粗相を働かないと誓った。

バスに乗り込み、正門を出る。
福島までは2,3時間くらいだろうか。
それまでは図書室で借りたバレーボール入門書を読むことにした。


・


「バレーのこと少し分かった？」

「まだ難しい」

「私も」

隣で別々の入門書を読んでいた親友も難しい顔だ。
サービスエリアの自販機で水を買い、バスに戻る。
先程座っていた窓側の席に着き、ふと隣のバスに目を向けた。

あ、国見くんだ。
スマホに目を向けているため、残念ながらこちらには気づいていない。
気づいてほしいな。
いや、そういう目的で合宿に来たわけではない。
真面目に仕事をするんだ。

一呼吸置き、栞をはさんだページを読み直した。

「あの、良ければどうぞ」

「あ、ありがとうございます！」

途中、同乗の二軍メンバーの方からお菓子を頂いた。
私もお菓子を持ってくれば良かったと後悔した。

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