ノート1冊につき、塩キャラメル1粒〜夏休み〜【国見英】

○念ずれば通ず ページ23

他愛もない話をできればいいが、生憎話題がない。
ここ一週間、部活が大変くらいしかない。つまらないことだ。
いや、書道は大好きだし、部活が充実しているのはいいことなんだけど。

スマホのホーム画面を見つめる。
とても恥ずかしい話なのだが、ここ最近体育祭で撮ったツーショットを眺めるだけでは飽き足らず、遂にホーム画面に設定してしまった。
彼女でもないのにおかしいと自分でも思うが、ホーム画面を見られなければ咎める人もいない。
一週間会えなかったくらいで、こんなことするとは。
恋煩いってこんな感じだったっけ？
以前の恋愛経験を辿るが、どうにも上手く思い出せない。
もしかして、こんな風に誰かを好きになるのは初めてかもしれない。
スマホをしまい、もうすぐ正門を出る。
いっそ、あの正門を出たら偶然国見くんに会えないかな。

そんな邪なことを考えていると、不意に後ろから肩を叩かれた。
何だろう。
振り向くと、頬肉に指が突き刺さる。

「あ、引っかかった」

国見くんだ。
念ずれば通ずってこういうことを言うんだっけ。多分、違う気がする。
指から距離を取り、国見くんに向き直る。

「国見くんも帰り？一人なの？」

「そう。金田一は自主練するから置いてきた」

「そうなんだ。私もほっぺぷにってしていい？」

「ダメ」

不公平だ。
意志関係なく触られたので、私にも触る権利はある。
相手の意志を尊重する体は取ったけど、尊重する気がないのならさっきの質問は意味ないな。
こういうのやめよう。

国見くんのツヤツヤの頬を触ろうとするが、両手でガードされてしまう。
何だかあざといな。
俊敏にスマホを取り出し、可愛いその姿をスマホに綺麗に収めた。
これでチャラにしましょう。

「待って。それはダメ」

焦る国見くんの手を避けて、スマホをポケットにしまう。
今日は上手くいったな。
先程までしたり顔だった国見くんのように、私も勝ち誇ってみる。

「不意打ちには不意打ちで返すのが当然では？」

「報復主義かよ。……予想外におふざけが発展したけど、それはまぁいいや。一緒に帰ろ」

「いいよ」

思いがけず一緒に帰ることとなった。
嬉しい。今日は幸運だ。

「Aも部活？文化部でも夕方までやるんだね」

「まあね。文化祭の準備で忙しくて」

「あー、夏休み終われば文化祭か。写真撮る約束忘れてないから」

文化祭では格好良くきめるつもりなので、それ自体は構わない。
でも私、貴方のバレーしている姿撮ってないので不平等だな。

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