ノート1冊につき、塩キャラメル1粒〜夏休み〜【国見英】

○些細な変化 ページ22

バレー部合宿から早一週間になる。
私はというと、課題と部活三昧だ。

課題は先に終わらせたい派なので、現時点で8割は終わった。
残りの2割もさっさと終わらせて、夏休みを好きなことに費やしたい。
筆書きの腕も上げたいし、友達と遊びにも行きたい。
親友とはあれからまだ会っていないが、連絡は毎日取っている。
リゾート地で働く親戚のところへ短期バイトだそうだ。綺麗なビーチの写真を送ってくれた。
今度遊ぶ時にお土産をくれるそうなので、楽しみだ。

部活の方はちょっと苦戦中だ。
9月の文化祭に向けて、書道部では作品展示と体育館を借りてパフォーマンスを行う。
作品の方は1学期から練習していたこともあり、形になってきた。
明日から2泊3日の合宿なので、そこで更に詰めようと思う。
今年は京都で扇子作りと作品制作をするらしい。
一日中筆を持つ機会があるのは喜ばしいことだが、わざわざ観光地まで行って部屋に籠りきりというのは勿体ない。扇子作りはとても面白そうだけど。
せめてお土産を買う機会があるといいな。

書道パフォーマンスの方はまだまだ納得のいく出来ではない。
今も絶賛苦戦中だ。
大筆は先輩の役目だが、中腰で筆を走らせるのも辛い。
合宿後にジョギングと体幹トレーニングを始めたとはいえ、その効果はまだ見えていない。頑張ろうと思う。
それから、美しい字を書くのは大前提。
筆は得意ではないが、苦手でもない。
こればかりは練習あるのみなので、地道に努力する。

新聞を取り換え、もう一度私の担当文を書き入れた。



・



夕方になり、道具を片付け始める。
合宿前日なのに、一日練を入れてきたのは意地悪だ。
最高のパフォーマンスと作品を仕上げるには、必要なことだけど。
まぁ合宿準備は終わっているし、あとはこの道具を持ち帰るだけだから良しとしよう。

道具をしまい、手を洗う。
そういえば、変わり映えしない日常でも些細な変化はある。
以前は手洗いもそこまで入念に行わなかったが、今では少しの墨汚れも気にするようになった。
完全には落ちないが、以前よりも部活後の手は綺麗である。
手を拭き、合宿でマネ先輩に教えて貰ったハンドクリームを塗る。
このハンドクリーム、本当にすべすべになるのでこれからも重宝しようと思う。
爪の手入れも毎日欠かさずやるようになった。

手のケアを始めたのは、偏に国見くんに好かれたいからだ。
彼とはあれから連絡すら取っていない。
最後の話題からどうすればいいのか戸惑っている。

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