ノート1冊につき、塩キャラメル1粒〜夏休み〜【国見英】

○合宿最終日 ページ16

今日は合宿最終日だ。
右往左往していた初日とは違い、今なら大体の仕事の流れを把握している。
ドリンク作りや洗濯の手際は格段に上がったが、相変わらずドリンクを運ぶのは辛い。
まぁ当然だ。筋肉は一日にしてならず。
たった3日程度で筋肉が順応するはずがなかった。
この合宿が終わったら、無理のない筋トレから始めようと思う。
ボール拾いの腕も上がったと思う。
ワンバウンドで跳ね返ったボールを怖がらずに取れるようになった。
それから流れ玉を避けるスキルも。
今なら最後までドッヂボールを生き残れる気がした。

午前は二軍のサポートだ。
ホイッスルが鳴り、試合が開始する。
すると、驚いた。
サーブが強そうなのだ。
ボールは上げられてしまったが、次への行動や予測も速くなっているように思う。
彼らはこんなに俊敏だったろうか。
レシーブも丁寧に見える。まだ一本目なのに、ラリーが続いた。
ボールが両陣地を5往復したところで、強そうなスパイクが炸裂した。
青城の得点だ。
途端に彼らから歓声が沸き上がり、そのビリビリした空気に高揚した。
二軍のレベルが上がっている。
この短期間で著しい成長だ。
きっと練習後も必死に自主練していたのだろう。

「凄い」

「分かりますか？俺達、結構頑張ったんすよ！」

思わず口から零れ、控えの選手にそう教えて貰った。



・



試合が終わり、二軍の誰もが喜んだ。
結果は僅差でうちの勝ちだ。
1試合が終わっただけだが、まるで優勝したような喜びようである。
でも、私も同じくらい心が躍った。

「次の試合も勝ちますよ！」

楽しそうに笑う彼らに、私も自分のことのように嬉しくなる。
選手が成長する姿を目の当たりにするなんて、なんという贅沢だろう。
初日の失礼な私、見たか。二軍の選手の成長ぶりを。

「お、応援してます！」

まだ緊張して上手く話せないが、何とかエールを捻り出した。
先輩とともにタオルとドリンクを配る。

「皆すごい成長ぶりだね！」

先輩の選手への励ましに、大きく首を縦に振る。

「あざっす！まぁ、マネージャーがいてくれたから頑張れたトコもあるよな？」

「そうそう！このまま2人ともうちのマネになりません？」

そう言っていただけると光栄だ。
このままマネージャーになるのも悪くないのかもしれない。
しかし、

「私は受験生だし、無理だよ」

「嬉しいですが、私は生粋の文化部員なので」

丁重に断らせてもらった。
バレーボールは面白いが、私はペンと筆を手放せない。

●溶解→←早く仲直りしてください 金田一side

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