細菌との攻防 その２ ページ9
触手に打たれることを覚悟して目を瞑った時、それは起こった。
「死ねオラアアアア！」
「ぎゃああああ！」
刃物を突き立てる音と、絶叫と、質量のあるものが着地する音。
突然変わった状況に思わず目を開けると、先ほどまでAを捕まえていた細菌が脳天から鮮血を噴き出して倒れていくところだった。
そんな細菌とAの間に立ちふさがり、血しぶきを浴びながらナイフを構えているのは。
「4989さん！」
「悪いAちゃん！遅くなった！」
Aに意識を向けながらも、油断なく細菌と対峙する4989番。
その白と赤にまだらに染まった背中に、かつてないほどの安堵がこみあげてくる。
「くっ、白血球め、あと少しだったのに！」
「いや、まだ2対1だ、同時にかかれば勝てる！」
後ずさって距離を取っていた細菌たちがそういうが早いか、触手を素早く伸ばして攻撃してくる。
しかし触手は鉤爪などがついていない柔らかいもので、次々と4989番のナイフによって切り落とされていく。
十分に触手を減らした4989番は、細菌たちが不利を悟る前に駆け出した。
「く、くそっ！」
「っ！」
その途上でもう一度繰り出された触手を1本2本と切り落とし、3本目が出る前に手前の細菌の喉笛を掻き斬る。
その勢いを殺さないまま奥の細菌にも駆け寄り、向こうが防御姿勢を取る前に相手の胸部にナイフを深々と埋めた。
「………。」
ナイフを抜かれると断末魔を発することもなく倒れ行く細菌と、それを討伐した4989番を見ながらAはただただ圧倒されていた。
初めて細菌とまともに対峙して、あんなのに敵うはずもないと思った。
実際に自分は細菌に簡単に捕まり、なすすべなく殺されるところだった。
その細菌を、あの人は3体ともあっさりと倒してしまった。
白血球が細菌を倒すところなど何度も見ているはずなのに、逃げるばかりで何も見ていなかったことを痛感した。
細菌を倒すという仕事がどういうものなのか今はっきりと理解できた気がする。
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リコピン@とまと(プロフ) - 志保さん» コメントありがとうございます。エピローグで締めた後は、番外集というか短編集みたいなのをできればなあと思ってます。できればそちらの方もよろしくお願いします。 (2018年11月6日 22時) (
レス) id: 6d907760cd (このIDを非表示/違反報告)
志保(プロフ) - 続きますよね？ (2018年11月6日 21時) (レス) id: 512d7a3c2b (このIDを非表示/違反報告)
リコピン@とまと(プロフ) - みかんパフェさん» コメントありがとうございます！面白いと言ってもらえて嬉しいです！お仕置きの時間だぜずっと入れたかったのですが、結局最後の方になりましたｗ (2018年11月6日 20時) (レス) id: 6d907760cd (このIDを非表示/違反報告)
みかんパフェ(プロフ) - こんにちはー！コメント欄失礼します！コメントしたいなーと思いつつ勇気が出ませんでした←すっごく面白いですっっ！！これが文才の差か…と思い知らされる作品でした。4989番のお仕置きの時間だぜが大好きなのでラストに出て来た時は嬉しかったですw (2018年11月6日 19時) (レス) id: e04ebc82bf (このIDを非表示/違反報告)
リコピン@とまと(プロフ) - 空さん» ありがとうございます！物語も佳境ですが、あともう少しあるので最後までお付き合いください！ (2018年11月4日 23時) (レス) id: 6d907760cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リコピン@とまと | 作成日時：2018年10月16日 19時
