彼女の名は ページ20
すぐそこまで細菌は迫っている。ぐずぐずしている暇はない。
足元に落ちていたがれき(というか細胞壁)を拾い上げるとできる限りの大声を上げる。
「おいのろま！こっち向け！」
細菌がこちらを向くと同時にがれきを細菌に向かって投げる。
キャッチボールすら経験のなかったAだが、奇跡的に細菌の顔面にクリーンヒットした。
「ぐうっ…！？」
細菌がひるんだすきに、赤血球の手を引っ張って立たせる。
「早く！今のうちに逃げるよ！」
「は、はい！ありがとうございます！」
2人で走り出すと同時に、復活した細菌が何やら叫びながら追いかけてきた。
声からしてそうとう怒っているらしい。
まあそうだろうな、と冷静に考えながらも先ほどよりずっと近い細菌の気配に背筋が冷える。
早く、誰でもいいからこの細菌を…。
その祈りが通じたのか、二人の両脇を白いものが猛スピードですり抜けた。
「「死ね！雑菌があああああ！」」
「ぎゃああああ！」
絶叫と物音に足を止めて振り返ると、両側から切り裂かれた細菌が倒れるところだった。
細菌を倒し終えた4989番と1146番は、ナイフを鞘に納めると同時に振り向く。
「二人とも！大丈夫！？」
「無事か？危ないところだったな。」
「二人ともありがとう！私は大丈夫！」
「あっ！白血球さんたち！助けていただいてありがとうございます！」
そこまで会話を進めたところで、赤血球二人が首を傾げた。
「「…え、白血球(さん)と知り合い？」」
―――――
白血球二人が洗い場に行っている間、Aと先ほどの赤血球、AE-3803番はベンチで休憩を取ることになった。
お茶をちびちび飲んでいた3803番が話を切り出す。
「あのー…、さっきは助けていただいてありがとうございました。」
「ううん、気にしないで。助けたって言っても一瞬足止めしたくらいだし…。」
「でも、それがなかったら白血球さんたちも間に合わなかったかもしれないですし…。
それに、あの状況で細菌を足止めしようなんて、誰にでもできる事じゃないですよ！」
「あの時はとにかく夢中で…。というか、4989さんが私を守ってくれた時のこと思いだしたら体が勝手に…。」
へえ、と返事を返した3803番はついで首をかしげる。
「やっぱり白血球さんのお友達のあの人とは知ってる人同士なんですね。それで…さっきのあれはやっぱり…。」
「あー…。」
「さっきのあれ」を思い出して頭を抱える。それは洗い場に向かう4989番たちとの別れ際のことだった。
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リコピン@とまと(プロフ) - 志保さん» コメントありがとうございます。エピローグで締めた後は、番外集というか短編集みたいなのをできればなあと思ってます。できればそちらの方もよろしくお願いします。 (2018年11月6日 22時) (
レス) id: 6d907760cd (このIDを非表示/違反報告)
志保(プロフ) - 続きますよね？ (2018年11月6日 21時) (レス) id: 512d7a3c2b (このIDを非表示/違反報告)
リコピン@とまと(プロフ) - みかんパフェさん» コメントありがとうございます！面白いと言ってもらえて嬉しいです！お仕置きの時間だぜずっと入れたかったのですが、結局最後の方になりましたｗ (2018年11月6日 20時) (レス) id: 6d907760cd (このIDを非表示/違反報告)
みかんパフェ(プロフ) - こんにちはー！コメント欄失礼します！コメントしたいなーと思いつつ勇気が出ませんでした←すっごく面白いですっっ！！これが文才の差か…と思い知らされる作品でした。4989番のお仕置きの時間だぜが大好きなのでラストに出て来た時は嬉しかったですw (2018年11月6日 19時) (レス) id: e04ebc82bf (このIDを非表示/違反報告)
リコピン@とまと(プロフ) - 空さん» ありがとうございます！物語も佳境ですが、あともう少しあるので最後までお付き合いください！ (2018年11月4日 23時) (レス) id: 6d907760cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リコピン@とまと | 作成日時：2018年10月16日 19時
