弁当売りの二人 ページ7
「あの!」
鬼の情報を集め、無限列車に乗り込むことを決めたAと杏寿郎は、弁当売りの少女と老婆に声をかけられた。
弁当売りの二人は、昨晩鬼の情報収集をしている時に出会い、切り裂き魔の鬼から助けた人たちだ。
はじめは警戒されていて、声をかけたら杏寿郎の顔にあんぱんを投げつけた勇敢な少女はとても優しい子だった。…まさか顔面に見事直撃するとは思いもしなかったが。
そして偶然にも少女のお婆さんは、二十年前父に鬼から救ってもらっていたそうだ。世間は広いようで狭く、身近なところで繋がっているのだと感じた。
「やあ、弁当屋さん!」
「昨日はありがとうございました。あの、これ貰ってください」
スッと差し出されたのは、食べ損ねていた牛鍋弁当だ。
「おお、これは有難い!実は昨日食べ損ねてな」
目を輝かせてウキウキとした表情の杏寿郎はどこからどう見ても年相応の青年だ。
「貰ってしまっても良いのでしょうか」
「はい、貰ってください!ほんの気持ちなんです」
「私たちにはこれくらいしか出来ませんから」
二人がそう言うのであれば、と有り難くお弁当を二つ貰うことにした。そして残りの弁当は杏寿郎が全部買っていた。
「お気を付けて」
「Aさん、また駅に立ち寄った時には声をかけて下さいね」
「ええ、今度はゆっくりお話ししましょうね」
そう言ってAと杏寿郎は駅の中へと入っていった。
「男の人の方はちょっと変わってるけど優しい人たちだったね、おばあちゃん」
「そうだね。…鬼狩りの人たちは命懸けで戦っているんだよ。私たちも私たちの出来ることをしようね」
「…うん」
人混みの中へと消えていく後ろ姿を眺めて、少し不安になった。今度ゆっくりお話ししよう、と言ったその言葉は二度と訪れないようなそんな予感がしたのだ。
大丈夫、だよね。
二人はとても強かった。殺されそうになっていた自分をすごい速さで助けてくれて、あっという間に鬼を退治してくれた。
眩しい太陽のような人と、静かに輝いてるお月様のような人。
どうか二人が無事でありますように。
47人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
双葉(プロフ) - 夢村ほたるさん» お返事遅くなり申し訳ありません。コメント嬉しいです、ありがとうございます。 (2022年2月9日 10時) (レス) id: eed200f551 (このIDを非表示/違反報告)
夢村ほたる - 自分がでてきて本当に嬉しいです (2022年2月7日 8時) (レス) @page2 id: 7302bc0929 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:双葉 | 作成日時:2021年12月30日 15時