時を馳せる恋日記 13

13-33 笑ってあげない。 ページ33

◆ 2004.12.16 / 11:10PM ◆

・・《A》・・

ﾘﾋﾞﾝｸﾞのｿﾌｧに座り、大好きなｺｰﾋｰを飲みながら小説を読む。私のいつも通りの日常。

『…ねぇ、ﾇﾅ。その本面白い？』

…なはずが、ちょこちょこ話し掛けて来る構って犬が一匹、床で毛布に包まりながら上目遣いで私を見上げている。

溜め息をついてしまいそうだ…。

酷い事を言われて私はすっかり気分が悪くなったし、今も気分が悪いままなのに、こいつの切り替えの早さと言ったら…凄いの一言尽きる。

ﾇﾅは俺が守る宣言から、そのためには体力を付けとかなければと思ったのか、そうじゃないのかは分からないが、食事を再開させた。

やっぱり美味しい、冷めても美味しい、など褒める事を言いながら食べていたが、冷え切った心には響くはずもなく。

でもどうしたら良いのかも分からなくて、その場を動く事はしなかった。

そうして料理を全てたいらげると、今度はせめてものお礼に食器を洗うと言い出し、断ったが礼儀を尽くさないと父さんやお兄さん達に怒られるからと言って食器を重ねてｷｯﾁﾝに消えた。

とりあえず何かやらせとけば静かになると思ったし、正直一緒にいたくないのもあって好きにさせた。

あいつはいないものとして自分の時間を過ごす事に決め、読み掛けだった本を開いた。

夢中になって読み進めていたら、“ﾇﾅ！食器洗い終わったぁ！”というでかでかとした声で邪魔されて、一気に現実へと引き戻されるはめに。

“他に何かする事ある？掃除とか…でも俺あんまり得意じゃないんだけどね”

ｴﾍﾍ…と少し恥ずかしそうに笑うｲ・ﾄﾞﾝﾍに、得意じゃないなら言うなよ、と思ったが声にするのも面倒で言わなかったけどね。

何もしなくて良いから大人しくしていろと言って、この今の形になったんだけど―、

『話し掛けないで。気が散る』

『えー、だってさぁ…。ていうか、今は本を読むのが流行ってんの？』

本に流行りとかはあまり関係がない気がするんだけど。

本が好きな人の中ではいつでも流行ってるだろうし、あんたみたいに苦手な人にはﾍﾞｽﾄｾﾗｰ小説でも興味が湧かないだろうからね。

えー、って言いたいのは私だ。答えなきゃダメ？面倒くさいな…。

『ﾇﾅって…俺にはその顔ばっか。怒らせちゃった俺が悪いけど…』

その顔って多分しかめっ面の事？それとも仏頂面かしらね。

その通りよ。気分が悪くなるような事ばかり言うあんたには……笑ってあげない。

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