シークレット・ストーリー

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お互いに、何も連絡しないまま







あっという間に月日が過ぎて







「…………明日、か」







明日。







Aが、結婚式を挙げる。







先月に籍を入れたことも







結婚式の詳細も







ハネムーンがフランスに決定したことも







全部、母さんから聞いた。







「……………」








呆気ないな、と思った。







こうも簡単に遠くへ行ってしまうものか、とも思った。







…でも、これでいいんだ、とも思った。







これで、全員が幸せでいられる。







カチッ







「………」







暗い部屋に、ライターの火が灯る。







何本目かわからない煙草を吸って、煙を燻らせる。







・







・







・







・








“潤、結婚式でAとバージンロード歩いてあげてね”







母さんの、嬉しそうな声を思い出した。







“お父さんも…きっと喜ぶわね”







母さんの嬉し涙を、思い出した。








「……………」







フーッと煙を吐き出す。







Aにあまり元気が無いらしいことも、母さんから聞いていて






少し心配ではあったけれど。








…式を挙げて、フランスでしばらく過ごしたら








きっと、元気も戻るし








幸せに、過ごせるに違いない。







…だから………………







♪〜







突然、スマホの画面が明るくなる。







母さんからだった。







「…ふ、もしもし？(笑)」








興奮してる母さんが容易に想像できて、思わず笑いながら電話に出ると







「潤」








静かな声が耳にはいってきた。








「…どしたの」








低いテンションに、思わずスマホを握る手に力が入る。








「今…篤人くんから連絡があって
Aが、どこにもいないって」








「……え？」








ピンポーーーン









タイミング悪く、インターホンが鳴る。








「どうしましょう、潤っ「母さん、落ち着いて。俺も今からAに連絡してみるし、思い当たるところ探して見るから…」







見つけたらすぐに連絡する、と言って電話を切る。








そのまま、しつこく鳴らされるインターホンにうんざりしながら玄関のドアを開けた。








「………勧誘とかならいいんで









・









・







・








…え？」








思わず、スマホを落とす。








玄関の前には









「…なんでいるの」








Aが、立っていた。

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